天は二物を与える

□第3話
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重い足取りで校門をくぐる。

周りにはほとんど生徒の姿は見られない授業開始三分前。

朝に弱い恋空は欠伸をしながら校舎に向かっていた。

眠気からか朝は歩みがゆっくりなのだが、(普通の歩幅なら)間に合う時間に家を出たため、余裕をかまし現在の時刻に気付いていない。

さつきは今日から部活のため、一人で登校している。
と言っても昨日もさつきを置いていって一人で登校だったのだが。

下駄箱で靴を履き替え階段へ向かおうと顔を前に向ければ、まだ記憶に新しい顔が目の前にあった。


『……まだ何かご用でも?』


今吉翔一、桐皇学園高校男子バスケットボール部の主将である。

昨日勧誘を即答で断ったばかりだと言うのに、日も開けずにくるとは。
……まぁ日を開けても断るけど…
と言うか、


『朝練いいんですか?』


そう聞けばニコッと笑い


「もう終わったで〜。
こんなギリギリに来るなんて、自分、お寝坊さんやなぁ」


と頭を撫でてくる。


『(……なんだこの人、ちょっとムカつく)』


と思いながらも携帯を見れば、携帯の時刻は既に始業1分前。


『……何時に来ようが私の勝手です。
授業に間に合えばなんの問題もありません。』


お寝坊さんと言われた意味を理解し、一瞬詰まる恋空だが、すぐに反論する。


「…まぁ、せやな。
今のはワシの都合やったわ。」


すまんすまんと笑いながら言う今吉に、恋空は呆れながら、もうチャイム鳴りますよと警告する。


「ほんまや。
残念やけど、話はまた今度っちゅーことで。
次から朝は待たんことにするわ〜」


お寝坊さんやもんなと言いながら階段を上がって行く一応先輩に、ちゃんと時間通りに家出たしとガンを飛ばす恋空だった。

溜め息をつきながら階段を上がれば、その途中でチャイムが鳴り始める。

まぁ、先生なんて大体チャイム鳴ってからくるだろうと悠長に考えながらゆっくり階段を登り、クラスのドアを開ければ


「おー、初授業、しかも俺の講義で遅刻するなんざいい度胸だな、天白。
寝癖ついてんぞー」


板書している途中だったのか、顔だけを此方に向け眉間に皺を寄せる東城がいた。


『(…時間割り見てなかった。)』


昨日東城から聞いていたため講義があることは知っていたが、まさか朝一とは思っていなかった恋空は自分の犯したミスに溜め息をつく。

後で何を言われるか…


『(て言うか寝癖?
朝鏡見てきたのに…)』


頭を撫で付けていると、冗談だバーカ、とっとと座れーと言う東城からの言葉が耳に入り、今日は朝から散々だなと、まだ起きてから2時間も経ってないのに本日何度目かの溜め息をつきながら、大人しく自分の席に着く。


『(もう、放っておこう。
体力の無駄だ…。)』





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