天は二物を与える
□第5話
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━━━ピピピピッ
━━━ピピピピッ
━━━ピピピピッ
━━━ピピピピッ
━━━ピッバシッッ!!
『………ん〜…』
目覚まし時計が規則正しく鳴り、ゆっくり意識が浮上する。
熟睡感はあるのに何故だか体が怠くて、いつも以上に布団から抜け出せずにいる。
寝起きの余韻を堪能しながら暫くごろごろした後、そろそろ起きなきゃと体を起こせば、全身に痛みが走った。
『っ…』
その一瞬で、倦怠感の原因を理解する。
『(あの変態教師のせいだ…
昨日暴れすぎて全身筋肉痛…)』
あれだけ動いたのはいつ振りだろう、と物思いに耽(ふけ)る。
『体力、落ちてるな…』
…だからなんだというのか。
もう、自分にはそんな物必要ないじゃないか。
そう言い聞かせるが、思いとは裏腹に悔しさは募るばかりで。
気付けば、どれだけの力で握っていたのか、掌に食い込んだ爪と、滲む赤。
『…もう、1年以上経つのに…
全然未練タラタラじゃん…』
今まで散々、もう必要ないと自分に言い聞かせてきた。
それでも、どうしてもバスケが好きで、本当は学校が終わった後、恋空はいつも、近くのコートで練習を重ねていたのだった。
しかし心の矛盾に自分でもどうしたらいいか解らず、昔程練習する事もなく、だからと言って全く練習しないという選択も出来ず、中途半端な練習を続けてきた。
それでも1日たりともボールに触れない日など、有りはしなかった。
バスケを諦めると言いながらも、バスケを諦める事が出来た日など、結局の所一度も無かったのだ。
だからこそ余計悔しかった。
練習量は減ったにしても、怠った日など無いのに、あれだけの事で全身が筋肉痛になってしまったことが。
『あたしは一体…どうしたいのよ…』
矛盾する気持ちに、唇を噛む。
自分がどうしたいのかなんて、本当は解っりきっている。
━━バスケを、したい…
ただ、限界があると知ってから…
バスケに関して誰よりも負けず嫌いなあたしは、それを受け入れる事が出来なくて、続ける事も、諦める事も出来ないまま、中途半端に今日まで来てしまった。
ただ、それだけの…それだけの話なのだ。
本当に未練がましい…
一体自分は何をしているのか。
深い溜め息をつきベッドから立ち上がると、洗面所に向かい顔を洗う。
簡単なお弁当を作り軽く化粧をしてから、学校へと向かった。