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□ごめんねがくれたもの
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O:こ〜ら、噛むな!
いつもと変わらない優しい声で俺に話かける。
唇を噛んでいる俺に気付いたのか、右腕を伸ばしそっと頬に触れると親指で唇を撫でられた。
何度も・・ゆっくりと俺をあやすように。
しばらくされるがままになって目をつぶっていると、その優しく動く繊細な指に、視線に、自然と落ち着く自分がいた。
いいのかな?正直になって・・・
いや、ダメでしょ?
もともと、他人をあまり信用してない俺だけど、この人の事は信用してる。
だって、嘘つかないし、つけなくて不器用な人だから。
きっと本気で言ってくれてるんだと思う。
だからって・・でも・・・本当に、いいのかな?
微動だにしない俺を見ていた大野さんが堅く結んでいた俺の唇の端を押し開けて親指を入れてきた。
俺は驚いて目を見開く。
N:・・ふぁにふるんですか?(何するんですか)
うまく口の形が作れなくて変な言葉になる。
O:ふふ、かわいいね・・。
ああ・・・。
もうなんだか、無邪気に笑うあなたに、さっきから俺を可愛いって恥ずかしげもなく言うあなたに力が抜けてしまう。
もう、この人なんなのかな・・?
この人の前だとなんだか難しく考えてる俺がバカみたいだ。
俺に膝枕されたままの大野さんとの距離は近かったけどもう不思議と恥ずかしさも戸惑いも無くなっていた。
口に指を突っ込まれて変な顔になっている俺。
いつものようにふざけて柔らかく笑う大野さん。
もう返事をしなくても、お互いに言葉を交わさなくてもいい。
ただただこの昔から知っている優しい空気が心地よくてずっとここにいたいなって思った。
・・・いていいのかな?。
・・・いや、・・・いたいな・・・。。
N:・・ふふ。
思わずほっとして笑ってしまうと、急に大野さんが左手で俺のシャツの襟をグイッと引っ張った。
その反動で頭がグッと下に俯く。
N:ふぇ!?
O:ふふ、ニノ、ごめんね?
ぼそっとつぶやく熱を持った大野さんの顔が近すぎて見えなくなり、指を突っ込まれたままの俺の唇に大野さんの柔らかい唇が重なった。
この時はいつものように食事を断って謝まる大野さんの優しい
「ごめんね」
が、俺にとって大事で特別な言葉になるなんて思いも寄らなかった。