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□愛すべき嘘つき(Nさん編)
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それから午後一で仕事が入ってた大野さんは。
昼前にマネージャーが迎えにくるからって、準備し始めた。
ふと、動きが止まって、俺の方に近付いたきた。
O:昨日マネージャに、ここに迎えに来てもらうように頼んでおいたから、ゆっくりしてていいよ。
N:え?そうなの?
O:うん。
N:・・・でも、いいの?居ても・・。
O:何で?良いに決まってるじゃん?はい、これ鍵ね。
N:・・・ありがと・・・。
O:服とか飯とか適当にしてていいから、鍵も返さなくていい。それ、和のだから。
N:・・・・大野さん・・。
俺は、大野さんの自然な気遣いや、優しさに。
返さなくていい鍵に。
「ずっと側に居てもいいよ」って。
許されたみたいで。
思わず涙が、溢れてしまった。
O:・・ばっか!お前、泣いたら仕事行けなくなるじゃんか・・。
N:っつ・・だって・・。
O:・・・和・・。
自分のテトリーに、人をあんまり寄せ付けない。
大野さん。
俺をこうやって受け入れてくれる事が。
すごく嬉しい。
今日何度目か分からないけど。
大野さんがまた俺を抱きしめて。
優しいキスをしてくれる。
O:泣き虫和、大好きだよ・・・。
もう何度目か分からないけど。
愛をささやいてくれる。
ああ。
もう、俺さ。
この人に、嘘つけなくなるんだな。
「好きじゃないよ」って。
ほんとの気持ち、隠すための 嘘。
あなたに対する自分の中の。
諦めと欲の入り混じった。
恋情とか。
愛情とかさ。
騙し騙しで、ここまできたけど。
俺の心も身体も全部。
あなたに晒してしまったから。
そして何より、あなたの。
この優しい愛の前じゃ。
正直。
太刀打ち出来なさそうだ。
N:・・俺も、あなたが・・・大好きだよ・・。
もう、抗えない。
もう、隠さなくていいんだ。
切なくて、苦しい嘘も。
今日で、卒業するよ。
俺は布団から左手を出して。
大野さんの暖かい手を、探した。