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□抱きしめる(Nさん編)
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Side:N
あなたが元気ない時
あなたが落ち込んだ時
あなたが泣いた時
俺はどうしようもなく
あなたをもっと好きになる
「明日の朝、帰るよ」
スマホの画面を確認して
ベッドに横たわる。
こんな連絡事項も
もう当たり前になっていた。
今日の朝早く釣りに出かけた
大野さん。
オフなんだから
俺の事なんか気にしないで
ゆっくりしてくればいいのに
意外と律儀に
連絡してくれる。
まあ、嬉しいですけど。
船で行っちゃうから
色々と心配もあるし。
スマホの画面を切り替えて
簡単なゲームをしていると
着信があった。
N:もしもし?どしたの?
大野さんだった。
さっきメールくれたのに
何だろう?と不思議に思った。
O:・・・・和。
N:ん?
何だか少し声が低い。
O:ごめん、起こしたか・・?
N:ううん、起きてたよ?
時間にしてみれば
もう寝てたと言ってもいい位で
こんな時間に電話をしてくるなんて
本当に珍しい。
O:・・・そっか・・・。
いつもなら直ぐに要件を言うのに
歯切れが悪い。
N:何?何かあったの?
O:・・・いや、声聞きたくなっただけ・・・。
N:・・・・・。
聞いたこと無い言葉に眉が寄る。
N:そう・・・、ちゃんと無事に帰って来なさいよ。
小さな不安が俺の中を走って
いつもは言わないような事を言わせた。
O:ん・・、ふふ。大丈夫。
小さな笑い声を聞いて
少しは安心したけど
明らかに様子が変だ。
O:明日、行ってもいい?
N:・・・ええ、いいですよ。
O:魚持ってく。
N:捌いて持って来てくださいね。面倒くさいんで。
O:分かってるって。
何でもない会話なのに
どこか元気のない声に
心配になる。
緊急じゃないにしても
大野さんの中で
何かが
あったんだと思った。