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□ごめんねがくれたもの
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潤君が楽屋を出てから、よいしょっとソファーから立って帰ろうとするといつからそこにいたのかソファーの裏側に背中を預けて地べたに座っている大野さんに気付いた。
N:あれ?あなたまだいたの?もう帰ったかと思った。しかもなんてとこに座ってんの?
ん〜と気のない返事をして雑誌読んでる。
N:・・・俺帰るよ。お疲れ・・
あいまいな返事の大野さんにこれはほっといた方がいいのかな?と思ってふと出口に向かおうとした時、着替えた私服のシャツの裾がクンっと引っ張られた。
ん?と振り返ると目線は雑誌に向けられたままだけど、大野さんが俺の裾を小さくつまんでいた。
N:・・・何よ?
O:・・・もうちょっと休んでけ。
N:え?
俺は聞こえたけど大野さんのその一言が空耳のように感じて聞き返してしまった。
O:・・・俺まだ帰れねぇし、マネージャーの話が終わるまでまだここにいろよ。
N:何それ?どうゆう意味?
O:いいから・・・。
N:なんで大野さんが帰れないと俺もいなきゃいけない訳?
俺はこの人が自分を心配して言ってくれてるのが少なくて意味の分からない言葉から伝わってきちゃって、思わず嬉しくなった。
でも、気をつかわせるの好きじゃないから、いつものように突っ張って言い返す。
N:ていうか大野さん、今日用事あったんでしょ。早く帰らなくていいの?
O:・・・断ったから。
N;・・そうなの?
それは仕事の終わりが遅くなったからそれはなんとなく本当かなって思ったけど。
俺はこの楽屋に二人きりでこのなんとなく緩やかな雰囲気に飲まれそうでちょっと居心地が悪くなって浅い溜息をついた。
N:・・・おおのさ
O:ほら!よっと!
俺の呼びかけに被せて急に大野さんが摘まんでいたシャツの裾をもう一度クイって引っ張った。すると俺はよろけてまたソファにボスっと座ってしまった。
N:ちょっと、何するんですか?
いつもの大野さんならこんなに強引な態度は取らないはずなんだけど今日はちょっと様子が違うみたいだ。
すると、直に床に座っていた大野さんが立ち上がって俺の隣に座りこんできたかと思ったらゴロンって俺の膝の上に頭をのせて寝っ転がった。
いわゆる膝枕してる状態に。
N:え!
その予想もしてなかった動作に俺は思わずビクッてなってしまった。
たまにこうやって膝枕したりするから不思議ではないけど、今日は疲れて気を抜いていたからかびっくりしてしまった。
下から見上げるように俺の顔をのぞき見て、さっきの無表情とは明らかに違うふんわりした笑顔で、
O:ふふ、・・かあわい・・。
俺は一瞬死んでしまったんじゃないかと思うくらい息が止まって、顔がカッと熱くなった。
N:なっ!・・に言ってんの?!
俺は動揺しちゃいけないと思って笑おうとしたけどうまくいかなくて、みるみる顔が熱くなるのが分かってしまった。
これは、まずい!
O:真っ赤だし(笑)
N:あなたが変な事言うからでしょー!早く降りなさいよ!帰るんだから!
俺は力一杯、大野さんの頭をぐいぐい押して退けようとした。
O:まだ,ダーメ。
この細ッこい身体のどこからそんな力がでるのか分からないけどギュウギュウと俺の腰にしがみつき離れない。
誰か来たらどうすんの?!
俺は恥ずかしくて必死にバタバタして、ついに力つきて俯こうとしたけど下には大野さんがいるからプイッと横を見て脱力した。
N:なんなのよ、もう・・・。
O:・・ふふ、勝ったな。
満足そうに俺の腹に顔をくっつける大野さん、これ超恥ずかしいんですけど!
N:何が勝っただよ・・逆に疲れちゃったよ(困)
もう半ば離れてくれるのは諦めて、下を見ると大野さんと目があった。
その目はいつものぼーっとしているものでもなく、演技してる時みたいなキリッとしたものでもなく、何だろう?
泣きそうな、それでいて何か考え込んでいるような目で俺を見ていた。