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□愛すべき嘘つき(Oさん編)
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今日は一人で雑誌のグラビア撮影で。
ファションに疎い俺は。
普段、絶対着ないような洋服を目の前に。
苦笑いする。
O:あの、これって俺が着るんですよね?
キョトンとする、スタイリストさん。
ス:え?そうですけど・・?あ、気に入りませんか?別のを・・・。
O:いや!違うんです。高そうなスーツだから俺が着ていいのかなって・・。
俺、ファッション疎いけど。
これ、ブランドのスーツだよね?
少し光沢のある黒生地が滑らかで。
手触り最高で品のある感じ。
値段も高そうだ。
ス:何言ってるんですか!大野さんに用意したんですから大丈夫ですよ。きっと似合うと思います。
いやいや似合わないでしょ。
いいとこ、Tシャツとジーパンが。
一番、似合うでしょ。
こうやって「俺」を周りが決めて評価して。
本当じゃない「嘘の俺」が。
画面上や紙面上に溢れていくんだ。
もうこの仕事就いて、割と長いけど。
まだまだ慣れなかったりする。
O:・・ありがとうございます・・。
ス:このスーツ、合コンとか着て行ったら女の子にすっげーモテそうですよね!
ん?
モテル?
女の子にモテる?
ふと、俺は和の顔が浮かんだ。
このスーツを着た俺に和は、どう思うんだろ?
「孫にも衣装ですね」とか。
言いそうだな・・・、絶対に。
間違っても「カッコ良いです」なんて。
言ってくれないな・・。
うん・・。
ス:大野さん?どうしました?
和の事ばっかり考えてる自分に。
ちょっと、こそばゆくなる。
O:あ・・いや。俺も女の子にモテたいなーって思って・・あはは。
何をおっしゃるみたいな顔で。
スタイリストさんがスーツを合せてくれるけど。
俺だって、和にカッコ良いって。
思われたい。
好きな子に良い所、見せたいよな。
男なら当然じゃん。