小説

□インモラル・パーティー
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子供の頃からサッカーが好きで、小学生でジュニア代表になり、大会でも負けることなんてなかった。



サッカーが強い高校に入学し、初めての試合で優勝しレギュラーの座を勝ち取る事が出来た。



現在、三年生になった俺は受験を控え、引退が目と鼻の先だった。


青春の全てをサッカーに捧げたんだ……………………。


あんな事が起きるまでは……。




「あの……山田さん……」



部室の前で、掠れた声に呼び止められ、声のした方へ顔を向けると、俺よりも若干小柄な男が立っていた。


彼は、サッカー部のマネージャーを努めており、隣のクラスで女の子よりも可愛いとちやほやされている奴だ。



「……知念侑李」


俺の言葉に顔を赤らめてもじもじとうつ向き手を弄りながら口をもごもご動かした。



「あ、あの……今日はお疲れ様です。次の大会……記録更新になれば……良いですね」





その言葉にイラつき眉がピクリと上がる。



「……何ソレ嫌み?俺がミスしたの腹ん中では笑ってんだろ?……」



今日、練習試合で大きなミスをおかし、レギュラーは外されなかったが、今までのプライドが崩されてしまった。それを……こいつは……土足で踏み込んできた。

元々気にくわない奴だった。実力は有るのに、選手ではなく、部員の世話をするマネージャーに成り下がってへらへらしているこいつに。




「……いや、僕はそんなつもりじゃ…………」


知念は俺が睨み付けると、焦りながら顔を反らし唇を噛み締めた。


深いため息を吐くと、目の前でオドオドしている知念の肩を押し退け、部室に足を運んだ。






「くそッ……むかつく……」



イライラが全身を襲い、後ろから聞こえる情けない声を無視し、早々と着替え部室を後にした。






むさ苦しい男子校。


知念は顔も良く、小柄だから、色んな噂が耳に入ってくる。


色んな部活に顔を出し、身体を求めたり、教師と身体の関係を持っている。とか、、


胸くそ悪くなる。



只でさえ、空気の読めない奴なのに、、そんな変態っぽい噂が流れているなんて…………。


いや、考えるのはよそう。



学校から半分の距離を過ぎた所で違和感に気づく。



「やべ……携帯」


鞄の中を確認し、携帯が無いことに気づく。上着やズボンのポケットも探すが見当たらない。


部室に忘れてきた事を思い出し、急いで学校に戻る。


中身を誰かに見られたらと思うと焦り、足を速めた。






息を切らしながら部室の前まで着き、ドアノブに手を掛けた所でその動きを止めた。


(…………?誰か要るのか?)



ぼそぼそと微かに人の話し声が聞こえる。



ドアに耳を近づけ神経を研ぎ澄ませる。




その声は俺の親友と言える男で、サッカー部の部長を努める……高木雄也の声だった。

俺はほっと胸を撫で下ろしドアをゆっくりと開けた。



数センチ開けた所でその場で凍りついた。


目の前では、高木が後ろ向きで立っていた。

そこに膝を着き、激しく頭を動かしている人物が居た。


良く目を凝らすと、あの少女の様な可憐な顔立ちの男……知念侑李が高木の、、いや、男のペニスを加えている。


「はぁ……知念ッ……も、」


高木が深いため息を着くと知念の頭を掴み激しく動かした。


「ンゥ……ふ、んぁッ……は、んッ……」


甘い声を漏らし、高木のそそり勃つモノをうっとりとした表情でしやぶり付く知念。


「ッ……うぁ……ふ、」


高木がびくびくと大きく身体を動かした。……多分達したのだろう。知念の顔や、胸元には白くどろどろとした液体が付着していた。


俺は身体が動かず、暫く二人の行為に目を逸らさずにいた。

正確には逸らせなかったのだ。





二人は暫くは激しく呼吸を整えていたが、お互いに唇を合わせ深い口付けを交わし始めた。


これ以上、この場に居るのは不味い。脳が直接語り掛けて来た気がしてゆっくりと体制を整えた。


「っ」


しかし、知念と目があってしまった。

知念の黒々とした大きな瞳が見開かれた。と同時に口の端が持ち上がり、妖艶な笑みを浮かべた。


「は、ぁ、ふん……あっ」


まるで見せつけるかの様に、ねっとりと、いやらしく舌を這わせていく。




この場に居たくない。今すぐに離れないと。


慌てて、その場から離れて全力で走った。



あれは


確かに高木と知念だった。


走りながら、ある噂が頭によぎった。


『知念はマネージャーとして部員の下の世話もする』と。



「……ふざけんなよ…っ…」

何に苛ついてるのか、訳が分からなくて、ただ悔しくてたまらなかった。






次の日、俺は部活を休んだ。何も知らない高木が心配そうに声を掛けて来たが、昨日のあんな場面を見てしまったので、気まずい雰囲気になり、目もまともに合わせられずにいた。





放課後、昨日忘れた携帯を取りに誰も居ないことを確認し、部室に向かった。



(……良かった……皆帰ったか)


そっとドアを開け、人が居ないことを確認し、中に入った。


ロッカーの中を開けると、黒色のスマホがあった。


「……良かった……」


無事に手元に戻って来た事に安心して、ポケットに忍ばせた。



「や〜まだ〜さん♪」


不意な声に肩が大きく揺れた。


声のした方へ身体を向けると、その人物に驚いた。



「……知念……何で……」


妖艶に微笑み腕を組ながらドアに寄りかかっている人物にきつく目を向けた。


「ふふ、、怖い怖い……そんな睨まないでよ」


にやっと広角をあげクスクスと楽しそうに笑う相手にゾッと悪寒か全身を襲う。



本当に、あの知念侑李なのか?

目の前の知念はいつもオドオドしていた奴とはまるで別人だった。

「お前……誰だ?」


その言葉に、きょとんと目を丸くし此方を見つめていた。が、直ぐにかん高く笑い声を上げた。


「あはははっ……いきなり何を言い出すかと思ったら……涼介……君は……」


「昨日見てたでしょ?」


光の無い瞳が此方を捕らえる。

「な、……」


「酷いな〜覗きなんて……天才エースの山田さんがね〜……どう?興奮した?」



肩を掴まれ、首筋を舌で舐め上げられた。


ぬるりとした感覚が伝わる。


「ひっ……やめろ!!このっ変態!!」


勢い良く知念を突き飛ばした。


よろめきながら、うつ向き、瞳だけを此方に向けその白い歯を覗かせた。


「変態?酷いな〜。あんたの方がよっぽど変態だろ?」



そう低い声で呟くとスマホをかざした。



「ッ……」



そこには、誰にも知られたくなかった俺の…………。



「昨日さ、携帯忘れてくれたお陰であんたの秘密……知ることが出来たよ」



ひらひらと携帯を目の前でかざしながら更にいやらしく微笑んだ。



「まさか、、あんたがウリだったなんてね?」



かざされた画面には俺の裸の写真が写っていた。

しかも事後の後に勝手に撮られた物だ。



「な……んで……それ、、」


全身の血液が逆流しているかのように、痙攣を起こし、身体中の毛穴から汗が吹き出した。



暫くは黙っていた知念だが、壁に寄りかかり軽く前髪をかき上げ、唇を割った。


「携帯のデータを移す事なんて簡単だよ。でもまさか、監督とも関係があったなんて驚いたよ。そんなに……レギュラー外されたくなかったんだ?」



その言葉に頭の血管が切れた音が脳内に響いた。気がついたら知念の胸ぐらを掴み激しく壁に押し付けていた。



「……てめえみたいなクズに何が分かんだよ!俺がどんな覚悟でこんな…………」



言い終わらない内に唇を強引に塞がれた。


驚いて目を見開くと知念も目を開けたまま、舌先を口内に滑り込ませて来た。


「ぅんんッ…………ふざっ」


必死に抵抗するが、上顎を舌先でなぞられ、脱力する。舌を引っ込め様とするも、無理やり絡み付け逃げる事が出来ずにいた。真っ暗な部屋にお互いの息遣いと、水音だけが響いた。





やっとの思いで、知念を引き離し呼吸を整える。


暫く黙っていた知念が、俺の腕を引っ張り無理に立たせ、強引に歩かせる。


「なっ……オイっ」


スタスタと早足で向かった先はシャワールームだった。


「……君の事は誰にも話す気はありません。僕たちお互い何も知らなかった事にしてた方が何かと都合付くでしょ?」



ゆっくりと此方を向き、柔く微笑んだ。その表情は不覚にも綺麗だと思ってしまうくらい美しかった。



「……本当か?」


警戒心をあから様に剥き出している俺を見てまた、小さく笑い声を上げた。



「ええ……ただ、僕と少し遊びませんか?」


知念は自分の唇を指でゆっくりと撫で上げチロリと紅い舌を覗かせた。



「……何言って……」


動揺が隠せず、ただ、呆然と知念の顔を眺めているしかなかった。



「それ……辛くない?僕なら君を満足してあげられる……僕の言う通りにしてたら、画像の事は言わないし、データも消しますよ」



ズボン越しで自重しているモノをゆっくりと撫で上げられた。


脅しだ。こんなの…………でも、、

俺は知念の言う通りにする事を決めた。
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