小説

□生誕祭を貴方と
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今日はいつもとおかしい。



何故かメンバーが物をくれるしいつもより優しい。


朝、撮影現場に行くと薮と圭人から飴とプリンの詰め合わせを貰い、裕翔からはクッション。

光からはレストランの食事券を貰ってしまった。


何でか問うも、三人共ニコニコしてるだけで何も言ってはくれなかった。


俺は三人の態度に不信感と、嬉しさでモヤモヤしながら雑誌の撮影に集中した。



「伊野尾ちゃん!これ俺と知念から」

撮影、インタビューが終わり楽屋に戻るとテーブルには巨大なケーキが置いて有り、その存在感を出していた。



「うわ、良いの?チョー旨そう〜」


超時間の撮影で腹も減ってたから、何のためらいもなく目の前のケーキに口を付けた。


「うわ〜ひょーうまひ」


口に一杯ケーキを頬張り夢中で食べ進める。


「口に入ったまま喋んなよ!行儀悪りーぞ」
山田が母親みたいに口うるさく小言を漏らす。


「それね、涼介と僕で作ったんだよ」


知念がにこやかに俺とケーキを交互に眺めた。


それに対して山田が呆れた様に溜め息を漏らす。


「お前は何にもしてなかったろ!」


「ふん、材料費は僕も出したもーん」


なんてわちゃわちゃと言い合っている。


ふと、朝からのモヤモヤに気付き、目の前の山田と知念を見上げ口を開いた。


「なぁ、何でさ、皆俺に物くれんの?」


その言葉に山田が呆れた表情をした。


「てか、伊野ちゃん……分かって無いの?」


後ろからひょっこり顔を出したのは有岡だった。急に声を掛けられびっくりして危うくケーキを喉に詰まらせそうになった。


「はい、これ」


そう言うと有岡がお取り寄せのマラサダとドーナツが入った箱を目の前に置いた。


「へ?てか、何で?……ドッキリ?」

何故みんなこうも優しくしてくれるのか分からない。優しくした所で実はドッキリでしたとか……コイツらなら有り得る。


そんな事を考えていると、有岡が惚けた様な声でこう話した。



「は?てか、伊野ちゃん今日誕生日でしょ?」


え?


「嘘……誕生日?俺の?」



全く考えて居なかった。

呆けていると山田が苦笑いを浮かべおめでとうと言ってくれた。





そうか、だから皆俺に優しかったのか。



だが、なんか足らない。

満たされない気持ちで悶々としていた時、後ろから低音の声が聞こえた。



「何してんの?」


そう声を掛けてきたのは同じメンバーの高木雄也だ。

相変わらずのイケメンっぷりに見とれながら口の中に入っている固形物を噛み砕く俺に、そっとその長い指先が唇の端を撫でる。



「……付いてた。てか、すげぇな」


高木はテーブルの上に置かれた食べ物に目線を移し、やんわりとはにかむ。


「俺の誕生日だから、皆がくれた。」


「食べ物ばかりだね。伊野尾君ハムスターみたいだからかな?」


「何だよそれ〜(笑)てか、食べきれないし手伝って」

なんて、
下らないやり取りをして遊んでいたが、気が付いたら高木と二人きりになっていた。


「……なぁ、俺今日誕生日……なんだけど?」



うつ向きながら高木に目線だけを移した。



「……高木は何かくれないの?」


上目遣いで少し甘えた声で媚びる。


「…………じゃあ、目……閉じて?」


「ん」

高木に言われた通りに目蓋を閉じ、じっと待った。

しばらく待っていると、肩を軽く掴まれた様な感じと唇に柔らかい物が重なる感触が伝わった。


次第にそれは口内を軽く開きぬるりとした物が口内を動き回る。


「んぅ……ッ……」


ゆっくりと高木が唇を離し、濡れた口端を指で拭ってくれた。


「……何コレ、」


がちりと歯に当たる物を口の中で転がすと微かにミントかハーブっぽい味が口内に拡がった。



「のど飴……ごめんな。こんなので」

高木が優しげに笑みを浮かべ頭を軽く撫でた。


そして


「伊野尾君……お誕生日おめでとう」


耳元でそう囁いてくれた。


「うん……」


俺は恥ずかしくてまともに高木の顔が見れずにいた。


今日はメンバーに祝われて最高の誕生日を迎える事が出来た。


特に、最後の奴なんか最高だったし、、、


俺のにやけ顔に高木が「何?」と聞いてきたけど、何時もの返しで誤魔化した。





もう、口の中の飴は溶けて跡形も無くなっていた。





end

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