その他

□その光は凄く脆い
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デビュー日がじわじわと近付いてきている。


最近では、テレビにも沢山出させて貰い、確実に話題にはなっていると思う。


今日はJr.最後のライブの初日だ。



ラストでメンバー全員がそれぞれの想いを吐き出し、とても良いライブになった。




宿泊先のホテルで俺、高地優吾は同室の京本大我に目を向けた。



言葉に詰まりながらデビュー曲を歌う彼の姿が目蓋に焼き付く。



泣いたせいか目元が少し腫れている。


沈黙の中流石に気まずくなり、浴室へと行こうとベットから腰を上げた時だった。


「高地……待って……っ」


腕を強く引かれ、バランスが取れず俺は再びベットへと勢いよく倒れ込んだ。



「っ……いてぇ…急に何だよ……っ」



「………ごめん。……高地さ、俺……高地に抱いて欲しいん…だけど……」


独特な雰囲気を纏い、大我がベットへと乗り、上着を脱ぎ床へと落とした。


白すぎる肌に浮かぶ赤い飾りが目の前に飛び込み思わずごくりと喉が鳴ってしまった。



紅色に紅潮した大我が息を吐き出し、じりじりと距離を詰める。


ギシッとベットのスプリングが軋む。


「ちょ……大我……待て……」


軽く胸元を押し、近付く大我を引き
離すが、大我によってその抵抗は虚しくも終わった。


「高地………しょ…?」


その瞳に映る発情した色はとても濃く、大我の身体から発する欲情の香りに頭の奥が痺れる感覚に陥った。



「ん……」


唇が重なり、大我がいとおしそうに唇を挟み、ゆっくりと位置を変えながら移動していく。


「……どうした?」


お互いの距離が離れ、俯いたまま何も話さない相手に疑問を投げ掛ける。



「何?……お前から来るの珍しいね……何か…あった?」


そう、大我が自分から甘えて来るのは、大体弱っている時が多い。


その時はこいつの弱さを受け入れ、思いきり甘やかし、ゆっくりと時間を掛け抱く。


だが、今日は何時もと様子が違う。



「……高地……俺……恐い」


大我は顔を伏せたまま、俺の胸に顔を埋め小さく震えた。



「……恐い……?」


金髪の髪を撫で、優しく抱き締める。


ふっ、と小さく息が漏れ、大我がぽつりと言葉を吐き出した。



「デビューの日が近いじゃん?……テレビにも沢山出れて……皆との差が……凄くて、俺……何も無いから……」



泣いているのか、たまに言葉を詰まらせながら一言、また一言と想いを吐き
出す大我の背中を擦り、その肩に顔を埋めた。


「大丈夫……大我は充分やってるだろ……そんなに自分を責めるなよ」



「高地………」



小さく震える身体を少しきつく抱き締め、金色の髪に唇を落とした。




「……俺だって…恐いよ。多分、他の奴等も大我と同じだと思う………」


項垂れている大我の肩を掴み正面に向かせ、じっとその黒々した瞳を見つめる。



「だけどな…大我。俺達は一人じゃない。6人も居るだろ?……お前が立ち止まっても俺が……俺逹が助けてやる……だから……」


ボロボロと大粒の涙を流し、大我が首を横に振った。



「……俺……皆に助けられてばかりで……だから……」



『これからは助ける側で居たい』


真剣な眼差しでそう強く話す大我をもう一度抱き締めると、さっきよりも深く口付けを交わした。



そのままベットへと身体を沈める。



照明が反射して大我が眩しそうに目を細めた。




「……助けて貰うのも良いかもな………大我……」


軽く息を吐き、口元を緩める。


彼は小さく頷き、目を閉じた。


その細い指を取り、お互いの指を絡める。


これから先の事は誰にも分からない。

けど、誰かが立ち止まったら全力でその手を掴みに行く。


そう考えながら、更に強くその手を握った。







END


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