小説

□薮医者ワールド
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後ろから覗くと、声が漏れない様に左腕のパーカーの袖口を噛んで耐えている姿が映った。


その姿が妙に愛らしく思えてしまう。



「……動くよ?」


汗でべったりと貼り付いている前髪を優しく払い、耳元で囁いた。


一瞬有岡の瞳が大きく見開かれたが、直ぐに柔らかい表情に戻り静かに頷いた。




自然とお互いの唇が触れる。


有岡が自然と唇を開くと同時に舌先をその熱い口内に滑り込ませる。


上顎を舌先でなぞり、噛みつく様なキスを交わした。



「……大ちゃん、、」


口付けを交わしながら、ゆっくりと腰を動かす。



有岡の胎内は熱く、腸内がうねうねと動き回るような感触でしっかりと俺のぺニスを食い込んでいる。



「ッ……キツいな……。ちょっと緩めて」



眉間にシワを寄せ瞳を埋める。



「はっ……無、り……」



涙ながらに荒く呼吸を繰り返す相手の両足を持ち上げ自分の肩に乗せた。




「うわっ」


「なっ!?」



顔面を真っ赤に染め上げ、有岡が悲鳴を上げる。




「……こうすれば、繋がってるのが良く見えるからね」



そのまま白い太ももに唇を落とした。




「大ちゃんからも見えるでしょ?」



少し意地悪そうに問いかけるが恥ずかしがり顔を背ける有岡。


その唇はきつく閉じていた。




「……なんか言わないと、さっ」



腰の動きを速め、奥側……前立腺をノックするかの様に腰を打ち付ける。




「ぐぁッ……うっ」




低く有岡が喘ぐ。



「……だからさ〜。もうちょっとさ、色っぽい声出せないの?」



お人形の様に愛らしい有岡の顔からは想像出来ないようなオス声に若干ガッカリしながらも必死に快楽を耐えている姿は可愛く思えた。



「……無、りぃぃッ……奥っ、ヤバ……は、ぁッ……」



シーツをきつく握りしめ左右に首をぶんぶんと振り、かすれた声を上げる。



更に足を高く上げ、奥に突き上げる。


ぎゅうぎゅうに締め付けられ、もう限界だった。


「ッ……大ちゃん……イクよ……ッ」


有岡の若干萎えかかっている突起物を手で包み込み、前後に手の動きを変えた。



「あっ……ちょっ……待て……ッ……」



俺の動きに合わせてガクンガクンと壊れた人形の様に身体を動かしている。



射精が間近になり、更に腰の動きを速めた。


「や、薮ちゃ……激しッ…」



肩呼吸を繰り返しながら途切れ途切れに有岡が叫んだ。



手の内で有岡のぺニスがびくびくと脈を打ち、先走り汁が手のひらを濡らす。



「……も、イクッ……大ちゃん……」



有岡を両腕で包み込み、俺はその胎内で果てた。


どくどくと熱い欲を全て有岡の中に吐き出した。












「だから〜。ゴメンって」


次の日、当然口を効いてくれずにむくれている相手に必死に言葉を掛ける。



「…………」



有岡がちらっと此方に目線を向け、亀虫を噛み潰した様な苦い顔をし、再度顔を伏せた。



「……流石にやり過ぎたと思ってる!ごめん!」


深々と頭を下げると、頭上の上から低くい小さな声が聞こえてきた。



「なぁ……俺らってさ、何なの?」



その声は淋しそうな、哀しそうな、、、、そんな雰囲気だった。



「……え?」


有岡の言葉の意味が暫く理解出来なかった。



「こんな、セフレみたいな関係……もう無理」


有岡の顔を見上げると、その瞳には水溜まりが出来ており、瞬きをする度に頬に雫が流れ落ちる。


「は?」


呆然と有岡の顔を見つめる事しか出来なかった。


「セフレって何なの?」


「ふざけんなっこんな身体だけの関係もう、うんざりなんだよッ……」



勢い良く有岡が掴み掛かって来た。



「こんな……恋人でもないのに……」



その声は微かに震えており、うつむきながら小刻みに震えている。



「大ちゃん……」


俺の言葉にびくっと一際大きく跳ね上がる。



「俺たち付き合ってるだろ?今さら何言ってんの?」



「え?」

その言葉を聞いた瞬間、ぽかんと口を開け、呆然と俺の顔を見上げた。



「……だって何にも……」



「好きじゃなかったら抱こうと思わないし、てか、俺だけが付き合ってると思ってたの?」


正直ショックだった。

だが、有岡を不安にさせてたのは事実だ。



「……大ちゃん……」



正面に立ち、ポケットから紺色の小さな箱を出した。


「改めて言うね……好きです。俺と付き合って下さい。」


箱を開けるとその中心に光るシルバーの指輪。


それを取り出すと、有岡の左小指に差し込んだ。



「……薮ちゃ……ッ」



ぐじゃぐじゃに泣き崩れる有岡の頭を軽く撫で、自分の方に引き寄せる。


「……返事は?」



「……はい…」




実は今日は有岡と出会って10年が経ち、自分の中で特別な日だった為に指輪を用意したのだが、まさかこんな形で渡すとは思わなかった。



「俺たち、また最初から始めようか」



その言葉に柔らかく微笑み有岡が頷いた。







end
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