小説

□リスク
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「お疲れ様でした〜。」




番組の撮影が終わり、各々局を後にする。



俺は知念の後を追い、自宅付近まで着いてきてしまった。




「……何?」


ため息と共に知念が後ろを振り返る。



「……話があるんだけど」



もう、これっきりにする。



お互いにこうした方が良い様な気がしたから。




「……入って」





知念が部屋のオートロックを開け、俺を招いてくれた。

久しぶりに足を踏み入れる知念の部屋は懐かしい匂いがした。




「……知念、俺と」



「……お茶淹れてくるね」


俺が言い終わらない内に知念が席を外した。



話すらきちんと聞いて貰うことも出来ないのか……。

虚しさを通り越して悲しく絶望的な気持ちが俺を押し潰す。



ふと、ベッドルームのドアに目を向けると、少しドアが開いている。


そこに見える雑誌。




遠目で何の雑誌か見えなかったので、知念が居ない隙にベッドルームのドアを開けた。






「なっ」



目の前に飛び込んだのは異常な光景だった。



壁一面に貼ってある俺の写真やら、雑誌の切り抜き。

テレビの大画面には一時停止された俺の姿が映っていた。



「何だよ……これって」



ふと、床に散らばっている雑誌を見るとこの前の撮影で撮ったグラビアのピンナップだった。



その写真には白い液体が掛かって染みを幾つも作り上げていた。





「あ〜らら……見ちゃったの?」



突然の声に、勢い良くその方向に顔を向けると、知念が両腕を組ながらドアに寄りかかりながら、立っていた。




「知念……」




「駄目だよ、、、、勝手に人の部屋に入っちゃ……」



クスクスと口元に手を当てながら奇妙に笑う相手に恐怖を感じた。



「……何でこんな…」



その言葉に知念の動きがピタリと止まり、ゆっくりと此方に目を向けた。




「まだ分かんないの?」



ドスの効いた声で更に続けた。



「涼介がいけないんだよ。こんなにも僕を魅了させるから!!」



知念の言葉の意味が解らなかった。



「……俺と別れたいんじゃ無いの?」



その言葉に知念の目が一気にきつくなり、強く腕を掴まれ気付いたらベッドに押し倒されていた。




「馬鹿なの?僕が何のために今まで我慢してたか解る?」



そう言うと、知念の唇が俺の胸元に近づいて来た。


「ッ……やぁ……」



舌先を伸ばすと円を描く様にゆっくりと硬さを増した突起物を舐め上げた。



指先はズボンのチャックを下ろし、露になった肉竿を手のひらでこねるように弄んだ。




「あんッ……嫌、、や、」



久しぶりの快楽にまともな抵抗すら出来ずにいた。




「はぁ……まだ触るつもりはなかったけど……良いよね」


知念の肉棒をしごく手が逸そう速さを増す。


鈴口から先走り汁が溢れ出し、いやらしい音が響いた。


知念の指が鈴口を回しながら、亀頭、裏筋をも刺激する。


「あッ……も、止め……」



ゆるゆると指先を動かし、徐々に射精へと誘導して行く。




「アッハハ……イキそうだね〜。腰凄く動いてるよ」


知念の爪が鈴口に食い込んだ。


「あっ……ヤバ……イクからぁ……あぁッ……」



腰が高く浮き、勢い良く白く濁った欲を吐き出してしまった。




「……何勝手に出してんの……僕まだ楽しんで無いんだけど?」




荒く呼吸を繰り返す俺の脚を無理やり広げ、腰を持ち上げた。


「……っ」



知念が紅い唇を開くと唾液をその小さな穴に垂らした。



「ち……ねん……まさか」




驚く俺の顔を口角を上げ嘲笑いながら一気に己自身を挿入させた。




「いっ……て……っ」




まだ十分慣らされていないそこはぎちぎちと音を立て知念を呑み込んでいく。


激しい激痛が全身に襲いかかり、熱が伝わった。




「はぁぁ……久しぶりの涼介気持ち良いよ……」



「ッ……痛いって……抜けよ……ぁ、、」

俺の声なんか届いて無いらしく、知念がゆっくりと腰を動かし始めた。



「……ねぇ、僕が触らない間、、、、一人でしてたの?」



耳元でねっとりとした声で囁く。



「っ」


そのまま耳の穴に舌を差し込まれピチャピチャといやらしい音でなぶられる。


不意に知念の動きが止まり、視線を外された。



「僕はしてたよ……勿論、涼介とね」



「え……」



知念が何を言ってるのか理解するのに数分掛かったが知念の目線を辿ると一気に理解出来た。




そう。先ほどの大量の雑誌。



俺の載っているページにだけある謎の染み。




「……何で……こんな」




「何で?それは僕が涼介を愛してるからだよ」




困惑する俺を無視し、更に知念が続けた。



「僕が居ないと駄目になる姿が見たくてねぇ……距離を置いてたけど……」



一瞬黙り混むと、険しい表情で俺の顔を除き込んだ。


更に腰を強く打ち付け始めた。



「僕が居ない間に違う男に色目使って……そんなに犯して欲しかったの?」



「違っ……っ」


今の知念には俺の言葉は届いて居なかった。




「……涼介」



知念が何かを握らせて来た。


それに目を移す。



「!!」



俺の手の中にあるのは小型のナイフだった。



「知念……止めろッ……」


必死に手を離そうともがくも強く掴まれていて身動き一つ取れずにいた。



「……涼介ッ……イクよ……」


知念が射精をするために腰の動きを速め、激しく突いてきた。


「涼介……好きだ……涼介」


唇に軽く知念の唇が触れ、そのまま知念が覆い被さって来た。


ナイフを握っている手を固定され、知念の腹部にそれは容赦なく突き刺さる。



ドスッと鈍い音が耳に響いた。




目の前の知念が緩く笑みを浮かべる。


ゆっくりと目線を知念の腹部に移すと、そこに生えているナイフの柄。

じわじわと血溜まりを作り白いシャツを深紅に染めていく。




「あ……あぁ……ちね……っ」



全身が激しく痙攣しまともに会話も出来ずにいた。



知念が自分に突き刺さるナイフを勢い良く引き抜くと震える俺の頬に手を伸ばしてきた。




「これで……終わりにするから……泣かないで」


涙でぐしゃぐしゃになった顔を眺め、知念の手が涙を拭った。

血で染まったその手は、床に落ちたナイフを拾い上げると刃の先を此方に向けた。




「知念……何でこんな事……おかしいだろ」



震える声で知念に訴える。



「……ごめん」


「もう、涼介を一人にしないから……涼介は僕だけを見てれば良い」



きつく抱きしめられ、そっと触れるだけのキスを交わした。



「愛してる……涼介……」



俺も……と言いかけた時だった。



腹部に鈍い痛みが走った。


ドクンドクンと脈打つのが分かった。



自分の腹部に先ほどのナイフが刺さっていた。



熱く焼けるほどの感覚が襲う。



「……知、念……?」



目の前では小さく笑い声を上げる知念が居た。


少し目線をずらすと、知念の後ろには空の注射器と何かの白い粉が散乱していた。



ああ……。


そう言う事だったのか。



目の前に居る知念はとっくに俺の知っている知念侑李ではなかったんだ。





「僕がずっと側に居てあげる……もう、寂しい思いはさせないから」




遠くで知念の声が聞こえた。


「ずっと一緒に居られる場所に行こう……ね……ふふ」






薄れ行く意識の中で知念の狂った様な高笑いが耳に響いた。






どこで間違ってしまったのだろう。


考える必要はもう無いと思うが……。




知念の笑い声がうるさいほど響いている。





暫く経った頃には何も聞こえなくなっていた。







end
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