斎藤一京都夢物語 妾奉公

□64.雪の帰り道
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屯所へ戻ると丁度巡察に出た隊士達の背中が見えた。
二列に並んで進む男達の背中は、寒さに負けぬ威勢の良さを感じる。

「賑やかですねぇ・・・しかし、増えましたよねーっ」

屯所の門をくぐって沖田がぼやいた。
隊士が増えたは良いが、屯所が窮屈だと言いたいのだ。
近隣に分宿させてもらい少しは分散されているが、それでも以前に比べ遥かに人数が多い。

「騒がしいなぁ」

賑やかで楽しいことは好きな沖田だが、うるさく騒がしいだけの喧騒は好きではなかった。

「たまにならいいですけど、いつもこうだと流石に参っちゃいますね」

廊下を歩きながらぼやく沖田の背後に気配が現れた。
何やら不満を漂わせる気配だ。

「悪かったなぁ狭い屯所でよぉ」

「わっ、土方さんっ!」

夢主と斎藤は二人揃って黙ったまま振り返り、土方に会釈をした。

「だから今、新しい屯所を探してるんだよ」

ふっと目を動かし夢主を見て土方は続けた。

「あては見つけたんだがな。色々と収まらなくてなぁ」

「収まらないっていうのは山南さんのことですか、先日お部屋にお伺いした時に言ってましたよ。土方さんが久しぶりに来てくれたと思ったらまた言い争いになってしまったと」

沖田は切なそうに山南の言葉を土方に告げた。
大好きな二人の言い争いは見たくない。

「上手いこと、お願いしますよ」

沖田はそう言い残して、先に去って行った。

「やれやれ・・・」

小声で漏らすと土方も「じゃぁな」と手を上げ去って行った。
去った二人の背中はどちらも寂しそうで、いつもの逞しさは潜んでいた。

「なんだか大変・・・みたいですね」

「あぁ。土方さんはだいたいいつも大変さ」

「ふふっ」

「フッ」

別々の方向へ去っていった二人の背中を交互に目で追いかけ、夢主と斎藤は顔を見合わせ、クスリと笑い合った。
強い二人はすぐにいつもの背中を取り戻すと。
 
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