-短篇

北B 続・月下の愛逢瀬 R18
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これ以上しては壊れてしまうか。
斎藤はふと続く休日を思い、それも良いと、夢主に身震いを与え続けた。

夢主の声が声にもならなくなった時、斎藤は夢主の体を回して向き合った。

「行くぞ」

堪え続けた斎藤が己も放つと決めた時、囁いたが、夢主に反応はなく、呆けたように見上げている。
媚薬で蕩けた者のように、うっとり惚けた面差しだ。
フッと息で笑んだ斎藤は、発情した獣に似た目で見下ろすと、もう一度動き始めた。
今度は最初から容赦なしに強く穿つ。

「ひァアぅ」

精を放つ為の激しい突き上げに、薄れていた夢主の気が引き戻される。
引き戻されて、一気に高みに導かれるようだった。

微かに開いた瞼から斎藤を見ると、懐かしい瞳を見つけた。
ぎらりと燃えるような獣の目。目の前の女を欲して蹂躙せんと本能を剥き出しにしている。
夢主はぞくりとした。

──こんな一さんが、好きなんだ……

いつも冷静なのに、私の前ではこんなに、我を忘れて、求めてくれる。
雄々しい姿が愛おしくて、頼もしくて、堪らなくて。

一刹那、斎藤への想いを見つめ直したが、その時間は瞬く間に打ち消された。

体を襲う快楽に思考力は奪われていった。
一さんが好き、その想いだけが夢主を満たしていた。

「ぁアぁっ、ンッ、ふアッ、ンっ、んァアンッ」

突かれる度に深部で疼きは弾け、全身に響いて快楽を撒き散らす。

──もうイちゃう、意識が、飛んじゃうっっ……

夢主は悦以外の感覚を失っていた。

「くっ、出すぞ」

唸るように言うと、斎藤は夢主を更に激しく打ちつけた。
終いにするぞと、これまでになく規則的に夢主を穿つ。
自らの下で全てを委ね、受け入れて善がる姿を目に入れて、夢主の全てを見つめていた。

「ぁンッ、ぁッ、ンふっ、ンぁ、ぁアッ……」

響き渡る甘い声が、力を失っていく。

声が吐息に変わる中、斎藤が夢主の手に指を絡めて強く握った。
指の間に力を感じた時、夢主は体の中で脈打ち膨れるものを感じ、斎藤から放たれ熱が広がった。
白濁とした熱は温かく、じわりと広がっていく。

「っ……アんっ……」

斎藤は力みを解き、目を閉じて息を乱していた。
珍しく見せた大きな呼吸、熱い息が夢主にまで届く。

夢主は指の絡みから手を抜くと、力を振り絞って、斎藤に手を伸ばした。
こけた頬に触れるか否かのところで、斎藤が気付いて身を屈ませた。自らの手を重ねて、頬に触れさせる。

それから夢主の手に口づけて、もっと身を屈めて唇に口づけた。

「夢主」

そのまま身を倒して、夢主を潰すように抱きしめた。

汗濡れた二人の肌が互いに吸いつき、溶けあうように一つになる。
火照った熱がおさまるまで、斎藤は夢主を抱きしめていた。



薄暗い部屋に訪れた静寂。

耳を澄すませば、どこか遠くに宴の騒ぎが聞こえる。
微かに聞こえる、何かの弦を弾く音。笑い声のような騒ぎ声のような、人の声らしき響き。

一番耳に届くのは、愛しい者の息音だった。

やがて身を起こした斎藤は、思い出したように窓の障子を開けた。

僅かに生まれた隙間から、涼やかな夜風が部屋に入り込む。
同時に、柔らかな月明かりが差し込んだ。

月明かりが夢主の体に筋を描く。
斎藤は目尻を俄かに下げて、その光の筋を指で辿った。

果てたばかりの夢主がびくんと体を弾ませる。

「綺麗だな」

月明かりも、お前も。

囁いた斎藤は夢主に口づけをして、抱き起した。

夢主に差していた月明かりが斎藤の目を突き、思わず目を細める。
斎藤の腕の中で顔を上げた夢主は、月の色に輝く斎藤の瞳を見て、微笑んだ。

「一さんも……綺麗です」

大好きです、一さんの全部が。
そう言ってきつく抱き返す夢主。

愛おしくて堪らない。
斎藤は夢主と同じ力で抱き、頬ずるように顔を擦り付けた。

「夢主、愛してる。──今度の任務も必ず成し遂げる。無事に、全てを」

「はい。ちゃんとお家で待っています、一さん。あの、私も、一さん……愛してます」

言ってすぐさま、夢主は顔を斎藤の胸に埋めてしまった。耳が赤く熱く火照っている。
お前が俺に教えた言葉だろと揶揄いたくなるのを堪え、斎藤は夢主の耳周りの髪を除けると、手櫛で軽く梳いてやった。

夢主の耳はより強く火照り、赤みを増す。
ククッと笑った斎藤は、「あぁ」と遅い返事をして、熱い耳に口づけた。

そのまま続けて首筋に口づけを始めた斎藤は、先程つけた赤い痕を見て忍び笑んだ。

気付けば二人、月明かりを受けたまま、再び愛し合っていた。
空が白んで月明かりが薄れるまで、互いの温もりと熱を確かめて離れなかった。
 
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