斎藤一京都夢物語 妾奉公

□3.ここに来た意味
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「斎藤さん・・・どう思いますか」

夢主の部屋を出た二人は道場へ向かっていた。
抱えているもどかしさを稽古で少しでも振り払おうと言うのだ。

「どう・・・とは」

全ての事に於いてかと考えながら斎藤は問い返した。
全てが悩ましい。

「・・・夢主さんの言う後の世の事です。そんなに素晴らしい時代が本当に来るのかなって、この今の京を見ていると全く想像つかなくて」

沖田は廊下の板張りから顔を上げ斎藤を見上げると、落ち込む気持ちを誤魔化すように、あはははっと乾いた笑い声を響かせた。

「夢主さんが嘘を吐くような娘じゃないと確信しています。これでも人を見る目はありますからね!」

「そうだな。確かに嘘を言っている様子はない。だが、だとすると尚更厄介だぞ。他の連中に知られたら確実に狙われる。知っているのは俺達の事だけではないだろう」

「そっか・・・そうですね・・・」

「この先の時代の知識、この時代の行く末・・・歴史に興味があるようだったから、案外と細かく知っているのかもしれん」

沖田は頷いた。名前を言い当てる事から始まり、幹部それぞれの特徴すら知っていた。
恐らく他にも様々な事を知っているのだろう。

「俺は自分の行く道に興味はない。知っていてはつまらんからな。だが、そうではない連中も多いはずだ。だとすると確実に狙われる」

二人は視線を合わせて立ち止まった。

「とにかく僕達だけでも夢主さんを守ってあげなくちゃ・・・でしょ、斎藤さん」

斎藤は間髪入れず頷いた。
異論は無い。人として男として、当然のことをするまで。

「ま、確かになかなかの女だからな、相手にするのも悪くはないがな」

「斎藤さん!」

悪ぶる斎藤を、今はそんな冗談は通じないとばかりに叱咤した。
 
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