斎藤一京都夢物語 妾奉公

□6.副長助勤方
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「ほら、さっさと入れ」

とりあえず夢主を部屋の中に入れたかった土方は背中を押して促した。

「・・・ほぉ、お前・・・そういう趣味があったのか・・・」

障子を閉めて、何の話かと土方を振り返る。
顎を指でいじりながら部屋の一点を見つめる。視線の先にあった物。

「あぁあ!!」

先ほど蓋を開けた葛籠がそのままに、美しい褌がしっかりと見えていた。

「道場来る前もここにいたんだろ」

お見通しとばかりに夢主を見る土方。

「いぃいいましたけど、違います、覗いたんじゃ・・・覗きましたけど、そう言う物があるとは、思いもしなかったので・・・!!」

慌てふためき必死に誤解を解こうとするが土方ははなから気にしておらず、ふぅんと葛籠から夢主に目を移した。

「まぁいい、とにかく少し静かにしろ。芹沢さんに見つかったらもっと面倒になる」

「はぃ・・・」

道場に戻りたい土方は、静かにしろと告げるだけ告げて障子に手を掛けた。

「あの・・・」

「なんだ」

呼び止められて土方は意外そうだ。

「あまりに時間を持て余すので・・・何か、お部屋で出来るお手伝いがあれば・・・」

ほぉ・・・と考えながらまた顎を触っている。

「お前、縫い物は出来るか」

夢主は和裁の心得はないが、洋裁は好きだった。

「はい。簡単な縫い物でしたら・・・」

「そいつはいい」

季節が変わっても武蔵国の多摩や江戸を出た時のままの着物を着ている隊士も少なくない。
持ち合わせがなく、傷んだ着物を着回す者も多かった。
物は試しと土方は自分の傷んだ羽織りを持ってきた。

「道具は借りてきたから、これでやってみろ」

手渡されたのは自分がいた時代とたいして変わらない道具類。夢主は嬉しかった。
 
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