まかない飯

幕】師匠の思い出話に彩られ
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比古が視線を向けると夢主は咄嗟に足を閉じて座り直した。
足を動かした刹那、比古の昔語りに出てきたものと同じ厭らしい水音が響いた。

「ぁっ・・・ぁの・・・」

「ふっ、濡れてるじゃねぇか。斎藤に義理立てしてるんだろう、俺が駄目なら自分で触ってみな」

「そんなことっ・・・私は何も」

「強情だな。まぁいい」

比古が体勢を変えるとその前に座る夢主の体も動き、意識無しに立て続けにぐちゅりと夢主の恥ずかしい音が響いてしまった。

「ふっ、よく何も無いと言い切れるな。お前にもはっきりと聞こえたんだろう」

「なっ・・・何も・・・」

比古は夢主が自分の手を淫音の元へ導くよう首筋から耳にかけて、ねっとりと息を掛けながらゆっくりと囁いた。
しかし夢主は真っ赤な顔で首を振るばかりで、きつく足を閉じこれ以上の恥音を響かせまいとしている。

「やれやれ、強情な女だ。まぁだがいいだろう、日はまだ・・・・・・あるからな。お前が斎藤の元に帰るまで毎日語ってやる。そして俺の酒の肴になれ、世話してやってるんだ、それくらいして見せろ。俺が触れないだけありがたく思え」

比古の熱い息に夢主が痺れた背筋を仰け反ると、比古は笑ってその場を離れた。

「もぅ・・・意地悪・・・」

夢主は涙声で呟くと、自ら触れてしまいたい衝動で震える手を握り締め、必死に体の熱を抑え込んだ。

そんな夜が何日も続き、夢主の体の熱がいよいよ限界に達しようとしていた。
いつも通り比古に言われ比古の前に座る夢主。
真っ赤に染まった顔に涙を溜めて揺れる虚ろな瞳で、薄っすらと口を開くが言葉を発せずに、比古の語りに時折体を反応させていた。
開きっぱなしのだらしない口元からは一筋涎が垂れて放置されていた。
僅かに開いた股は着物に隠され見えないが、中ではタラリと口元と同じような涎が垂れて夢主の体を濡らしていた。

比古は夢主の限界を察すると、翌朝愉しそうに筆を取った。斎藤を呼びつけたのだ。


「全く、どういう了見だ。理由も述べず隊服姿を指定するとは」

添えられた地図に従い京の外れの山を登って来た斎藤は、機嫌悪く比古の山小屋に到達した。

「ここか。・・・チッ、おい、こんな格好で呼びつけるとはどういう了見だ!!」

筵の扉とも言いがたい戸をくぐって小屋の中に入った斎藤は目を見開いて硬直した。
夢主がなんともだらしなく、はしたない姿で座っていたからだ。
斎藤も目を離せずに凝視してしまった。

小屋の奥の文机の脚から伸びた縄に夢主の両足は一本ずつ繋がれていた。
動かす事もできるのだろうが、夢主は動く様子を見せず、たらたらと甘い香の蜜を垂らして足を広げていた。
両手は後に纏めて縛られ、焦点の合わない目でぼんやりとどこかを眺めている。
斎藤が現れたことには気付いていなかった。

「おい、一体こいつに何をした!!」

「ふっ、ただ俺の昔の話をしてやっただけさ。毎晩、甘い大人の夜の話をな」

「チッ・・・」

「だがこいつはなかなか頑張ったぜ、言っておくが俺は指一本触れていない。自分で触らせようと思ったがそれも拒んだ。大した女だ」

「だから、俺を呼んだのか」

「あぁ」

「ふざけた真似を」

小屋の中に座り酒を楽しむ比古を睨みつけると、斎藤は初めて小屋に上がった。

「何故この羽織を着る必要があった」

隊服で動くととても目立つ。この山までつけてくる者だっているかもしれない。
斎藤が単独で隊服を来て動く必要が全く分からなかった。

「試したんだよ。お前が夢主を守ってこれから先やっていけるのかな、隊服を着て囲まれたくらいで殺られるようなら夢主は返せぬ」

「阿呆くさい、俺を試しただと。・・・・・・おい、夢主」

夢主の前屈みで声を掛けると、夢主は初めて正気の色を見せた。

「さっ、斎藤さん・・・」

途端に自分の状況を把握すると羞恥心から体を小さくしようと必死に足を閉じ、斎藤から顔を逸らした。
しかし隠そうと動くほどに厭らしい水音を狭い小屋の中に響かせてしまう。
 
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