まかない飯

明】錦の女絵、悋気応変
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「随分品のない絵だな」

「そうですか・・・あっ」

夢主は差し出された錦絵を受け取ろうとするが、寸前で持ち上げられ空を掴んだ。
むっと睨んで見せる上目に斎藤が目を細める。にやり、小さな悪戯で自分を弄ぶ意地悪な笑み。
遊ばれた夢主は不貞腐れた。

・・・そこまで下品かな、そりゃちょっと肌蹴てるけど鎖骨が見えるくらいじゃない・・・

自分でも確かめたいのに見せてもらえない。
むくれていると斎藤がフフンと嬉しそうに鼻を晴らした。
絵を掲げて眺めている。

「男を煽る視線、艶めかしいな。落ちそうで落ちない衿、上手く描いたもんだ。あの若造も目が離せないわけだ」

嫌味を言い、寝巻であろうが袷をきっちり閉じている現実の妻を見下ろした。
その下にある肌は俺だけに許されたもの。
斎藤は歪んだ視線を向けた。

「そんな、絵を描いたのは月岡さんですし、左之助さんは関係無・・・」

「成る程、月岡の目にはこう見えていると」

手を伸ばした夢主から絵を逃し、斎藤は冷たい眼差しをぶつけた。剣気に似た突き刺さる気を含んでいる。
夢主は獣に睨まれた獲物の様に身構えた。負けませんよと睨み返しながら、本音では怯んでいた。

「一さ・・・怖いです」

「宴会に招待された、か。本当に道場の連中と呑んだのか、絵師と喧嘩屋、三人で呑んだんじゃないのか」

「違います、ちゃんと皆がいて・・・・・・」

「着物をずらせと言われたんだろう、巧みに導かれてお前は肌を見せた」

「してません、やめてください!」

太い息を一つ吐いて、斎藤は絵を指で弾いて投げ捨てた。
畳の上、夢主に見えるよう落ちる。
拾い上げようと気を取られた時、背後から武骨な手が伸びてくるのにも気が付いた。

「こうして、描かれている間は感じていたのか。胎が疼いたんじゃないか、男の視線に縛られて」

「やだ、一さ・・・」

斎藤は夢主の下腹部に触れて挑発し、短く笑って絵を見ろとばかりに背後から体を押した。
ぴたりと体を合わせて座れば、夢主はすっかり斎藤の腕の中だ。
着物の上に手を這わせる夫が気になって絵など見ていられない。
肩越しに振り返ると斎藤は夢主越しに絵を見つめていた。

「もう少しで肩が見えそうだ。ずり落ちないよう押さえていたのか。絵はこの一枚か、もっと先の絵まであるんじゃないのか」

「ありません!私が描かれてますけどその場にいませんでした、ん、やっ・・・」

話しながら斎藤が夢主の袷を開き、露わになった肌に唇を落としている。
柔肌を濡らしながら、少しずつ白い生地を引き下ろしていた。

「絵師が描くのだから脱がせたのはあの喧嘩屋か。考えるだけで胸糞悪いな」

「んっ、違うって言っているのに、一さんの・・・わからずや・・・んっ、痛いです!」

言い返した言葉に腹を立てたのか、斎藤は夢主の肩に小さな噛み痕を残した。
紅い痕を確かめた後は癒すように舌先で舐めている。
その濡れた感触がくすぐったく、夢主は小さく体を震わせた。

「楚々たるお前が乱れていく様を見ていいのは俺だけだ」

「んっ・・・」

「誰にも許すな、いや・・・俺が許さん」

「ん・・・ぁっ」

肩を舐めていた口が首筋へと上っていく。
苦手な場所を責められて痺れが一気に体を走った。
気も体も弛み隙だらけになった夢主は止める間もなく寝巻を剥がれ、胸を晒した。
役目を果たさぬ衣を腰紐が辛うじて夢主の肌に留めている。

「ぁっ・・・」

斎藤は背後から夢主の胸を揉みしだきながら、余った手を脚の付け根に滑り込ませていく。
筋張った指が蜜口を狙い、首筋に受ける愛撫で抵抗を失った夢主はされるがままに侵入を許した。湿った音が鳴り始める。

「んふ・・・ゃだ・・・乱暴、一さんっ」

いつもと異なる乱雑な扱い、乳房も蜜部も強い刺激を受けている。
まるで夜盗が捕らえた女を凌辱するかの如く荒々しい。
羽交い締めの様に太い腕が夢主の体を抑え辱めている。

「やっ、ゆっくりしてください、そんな・・・んんっ」

やめてと手を押すが力が入らず何の抵抗にもならない。
斎藤は無言で同じ刺激を与え続けた。
初めから強い動きが更に強く速く止まることなく繰り返され、戸惑っても逆らえない情欲に、夢主ははしたない声を響かせた。

「ぁん・・・ぃやぁ、ぁあんっ、ひゃあぁ・・・んんっ、ンふっ・・・も、ぁあんんっ」

「フッ・・・」

「んっ」

夢主が果てそうな寸前、斎藤は突然体を解放した。
重力に引かれ倒れた夢主は打ち捨てられたように転がった。
 
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