まかない飯

明】焼けた肌、焦れる想い
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「覚悟はいいな」

「んっ・・・」

私の初めては志々雄さん。
嬉しいです、私の道しるべ、生き方を教えてくれた志々雄さんが、今度は男の方を、愛し方を教えてくれるのですか。

・・・・・・愛し方、愛し方って、なんですか・・・・・・
・・・・・・もう、いい・・・・・・

もう何でもいい、志々雄さんが私に触れてくれてくれるなら。
自分の体を掴む熱に反応して浮かぶ綺麗なあのヒト。
本当に貴方が愛しているお方は・・・ううん、本当にもう、何でもいい。
考えを放棄して目を伏せた瞬間、激痛が走った。痛みと共に体の中に侵入する熱の塊。

「んふぁっ、っうぁあああっ、痛いですっ、志々雄さっ、痛いっ、熱いです、痛っ」

志々雄さんが、私の中に。
味わった事のない痛みに声を荒げた。
これまで受けたどんな仕打ちよりも深く、内臓を抉るよう体に響く痛み。それは感じたことが無いほど熱かった。

「お前の痛がる姿なんざ初めてだな。すぐに慣れるさ」

肩を掴まれて逃れられず、痛みを逃そうと大きな呼吸で胸を上下させる。
痛みの中、衿を掴んで暴かれた。
揺れる乳房に志々雄がほくそ笑んでいるとも知らず必死に苦しみを逃すうち、徐々に体内を滑る感覚が変わっていった。

「気持ち・・・いぃっ・・・」

自分でも考えられない言葉が零れてしまった。
けれど志々雄が動くたびに感じる。
フッと笑む気配を感じて、夢主の肉壁は志々雄を締め上げた。

「ハハッ、随分と俺を締めるな」

「んぁあっ、ごめんなっ、さぃ、ふぁんっ、ぁあっ、だって、も・・・んんっ、またイっちゃぃ・・・そぅですっ・・・んんっ」

「もう少し待て」

押さえ込まれるよう揺れる胸が掴まれ、揉みしだかれたと思った途端、先端が熱く濡れた。

「ぃやぁっ、ぁんっ、そこはぁ、ぁんっ、ひぁあっ!」

胸の尖りを弄ばれながら蜜壁を掻き乱され、夢主は溜めていた涙を溢した。
激しい喜悦に目の前が白んでゆく。
果てそうになると動きは緩まり、囁かれた。

一緒にイくぞ・・・・・・
微かに頷くだけで何の意思も示せずに、志々雄に操られるまま夢主の体は熱を受け続けた。


あれから今も、たまにこうして肌を重ねている。
アジトの柔らかな寝床が気持よくて、袖を引き上げるだけで体を横たえてしまった。

「志々雄さんは、どうして・・・・・・」

何だと問い返すよう疑問符を浮かべて振り返る顏。
恐ろしさは感じない。あるのは凛々しさと圧倒的な強さ。見下ろされて心が震えるのは、その強さが美しすぎるから。

――どうしてここに来てくれるんですか・・・・・・
――私を、少しは愛してくださるんですか・・・・・・

聞いてみたかった。けれど

『勘違いするな』

聞き慣れた貴方の声が容易に浮かぶ。
やがて戻る場所はいつもの閨、誰もが認める夜伽の由美さんがいる場所。
私だってあの方が好き。誰より凛と美くして、こんな私にさえ優しくて。
でも少しだけ、嫌なんです。

続きを飲み込んだ夢主を訝しげに見つめて、志々雄は気怠そうに煙管へ手を伸ばした。
由美が選んだ煙管。
強くて派手好きな志々雄に似合う倶利伽羅模様が施されている。

・・・・・・私にはとても選べない・・・・・・

ついさっきまで夢主を愛した手、煙の通り道を支える指が反り、艶めかしい。

・・・・・・次にあの指が愛撫するのは私じゃなくて・・・・・・

また体の奥が熱くなる。
夢主は自分の熱に気付かない振りをして身を起こした。
再び潤い始めた体に気付かれないよう着物を整える。
手際の良さには自信がある、大丈夫、志々雄さんには悟られない。

「ねぇ、知っていますか」

「何をだ」

「私にも、愛しい人がいるんですよ」

貴方だなんて口が裂けても言えないけれど。
言葉にしてみると、志々雄は少し間をおいて、煙を吐いた。

「何言ってんだ」

遠くに煙を流しながら、そんなもんとっくに気付いてるぜ・・・・・・、そんな顔をするから、微笑むしかない。
本当に気付いているのですか、でも志々雄さんは誰より鋭いから、本当に知っているのかもしれない。
だからこんな私にも付き合ってくれる。

「ふふっ、冗談です。驚きましたか、たまには志々雄さんの驚いた顔を見たかったんです」

「俺が驚くのは俺より強い男に会った時ぐらいだ。まだ見た事はねぇがな」

「難しいですね、探してみます」

私では貴方を驚かせることすら出来ないから。
それが分っているから笑うことしか出来ず、ふふふと笑い続けると、志々雄が夢主の唇を塞いだ。

「もう黙れ」

ようやく聞こえるような声で囁いた。

とっくに気付いてんだよ・・・・・・
最後まで聞く前に志々雄の手は煙管から離れ、夢主の上に戻ってきた。
再び衣擦れの音が響く部屋で、置かれた煙管がことんと落ちた。
 
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