まかない飯

明】今は、黙っていろ R18
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俺はお前を追いつめて、膝を割った。

そうだ、これがしたかった。

お前は悦んでいるのか恥じらっているのか、瞳を潤ませて俺を見上げている。
紅潮した頬、揺らぐ瞳。
俺を煽っているのか、その気がなくとも男にしてみれば誘いの表情だ。

お前の表情を堪能していると、突然お前は俺の腕を掴み、押し離そうと力を込めた。
とは言え、力は弱い。
形だけの抵抗なんだろう、なぁ、夢主。

「んんんん、んっ」

俺はお前の手から逃れ、股に顔をうずめて舌で遊びだした。
途端にお前は強い調子で息を漏らす。俺の頭に手を置くが、これまた抵抗は弱い。
舌先を尖らせて弄ってやると、俺を抑える手は呆気なく畳の上に落ちた。

お前の湿った蜜部はあっという間に愛液で溢れ、押さえつける太腿も痙攣を起こした。

相変わらずいい反応をしやがる。
手慰みもしておらず久しい刺激に過剰な反応を見せたのか、もしくは散々自ら手淫に耽った結果なのか。

お前に限って後者は無いだろう。

体を起こすと、お前の頬に涙が流れた痕があった。

「泣くほど好かったか」

「ん……」

火照りで強く染まった顔を振って、問いを否定する。
説得力に欠ける表情だ。
収縮を繰り返して溜まった愛液を吐き出しているお前の蜜部も、説得力に欠ける。

「ここばかりでは、淋しいな」

首を振った理由はそれを言いたかったんだろう。
お前は何処も彼処も敏感だ。
ひとつの箇所に固執しては他が淋しいな。

俺は着物の上から胸を擦り、膨らんだ先端を探した。

「んふっ……」

ここを先に可愛がってやれば良かったか。
胸の尖りを布の上から撫でてやるが、蜜部は収縮をやめず、淋しそうな水音を鳴らしている。

やれやれ……。
俺は衿の合わせを開き、胸の尖りを口に含んだ。同時に、淋しそうな蜜部にも触れてやった。

すると、お前は一番の抵抗を見せた。

だが虚しい抵抗だ。
幾ら俺を押しても体は動かない。
正直に受け入れて感じるがいい、抗うほど感じるならば、構わんがな。

「無駄だ」

「っふ、んんっ」

何もかもが面倒になりお前の顔を見に戻ったが、いや、お前を求めに戻ったが、正解だった。
疲弊は気力を衰えさせ身を鈍らせるとばかり考えていた。
事実は可笑しなものだ。むしろあの頃に戻ったような感覚がある。
幕末、血の臭いにあてられ、夜な夜な芸妓を犯すが如く抱いた、あの頃のようだ。

お前の無意味な抗いが堪らなく、俺をあの頃に引き戻していく。
昂ぶりが体中に駆け巡り満ちていく。
暴れる手を掴んで畳に押し付けて、閉じたがる脚の間に割り込んで、首を振って拒むお前を睨み下ろす。

「何故だ、何故嫌がる」

「ンん"っ」

何を言っても俺には聞こえん。
そう暴れるな。
体は欲望に従順、俺を待っているじゃないか。

お前の両手をひとつに纏めれば片手で事足りる。
片手でお前を封じたまま、俺はお前の割れ目に硬くなった偎物をあてがい、押し挿れた。

「ン、ンんッ……」

肉壁を割って進む感触にお前が背を仰け反らせる。
もう手を抑えている必要はなさそうだ。
俺はお前の手を解放して、代わりに脚を掴んで持ち上げた。

「ンンンッッ」

咥えさせた手袋は涎で濡れて、重そうにお前の顔に張りついている。
これ以上滲み込む余地が無いらしく、お前の口端から涎の筋が伸びていた。

苦しそうじゃないか。
だが濡れた手袋が抜かれたらお前は声を響かせる。いいのか、声を抑えられるのか。

解放されたお前は安堵するかもしれん。
が、同時に困惑するだろうな、声を抑えるなど出来る筈がない。
自覚があるお前は恥じらい、啼くだろう。

お前を困らせたい。
困惑で涙を溜めるお前は好い。お前には悪いが唆るんだよ。

俺はお前の中を深く貫いて止まり、お前の口から手袋を抜き取った。

「ん、ぅふぁっ、は、はじめさ……」

「啼け」

「やぁ、ぁあ"、ンンッ」

意地悪くお前の中を抉り続けると、お前は淫らな声を漏らし続けた。
丸聞こえだ。
どこまで届いているか、俺にも分からん。
覗きに来る阿呆が居れば斬り捨ててやる。
俺が去った後にやって来る阿呆は探し出して斬ってやる。

今はただお前の声が聞きたい。
だから啼け、声が嗄れるまで、俺を疎ましく思うまで、散々啼いて愉悦に溺れるがいい。

俺は文字通り、貪るようにお前を抱いた。
体の中からお前を食むように、激しく穿ち続けた。
お前に起こる絶頂の波を気にも留めず、己の欲に任せて獣のように肉壁を弄ぶ。

厭らしくも愛らしいお前の嬌声は、最早ただの泣き声に変わっていた。

泣かせたか……。

まぁいい。

お前の涙に理性を取り戻し掛けたが、俺はすぐに獣欲に身を任せた。
安心しろ、壊しはしない。
俺の感覚を忘れられずに疼く夜が続くかもしれんが、致し方なし。
慣れぬ手慰みで俺に焦がれるがいい、またお前を犯しに戻ってやる。
何度でも、お前を乱してやる。
俺に縋って犯してくださいと願うほど、お前の体に俺を覚え込ませてやる。

俺の熱、俺の形、俺の動き、全てお前に叩き込んでやる。

緩急付けた動きはやがて激しいばかりになり、強く重くお前を貫いていた。
お前の声は泣き声にもなっていない。
体は既に何度も痙攣している。
引き抜く動きをすれば、俺に吸い付いて引き込もうとする。

飲み込まれそうだ。

「っ、夢主っ」

くそ、限界だ。

俺は最後の仕上げにお前を深く突き上げて、熱を放出した。
涙で濡れた顔、お前は必死に息をしている。
息は荒いが、ようやく解放されて安堵したのか、目を閉じた顔は穏やかだ。

俺は家に戻って初めて、お前に口づけをした。
軽く触れて終わるつもりが、続けてお前の舌をねぶっていた。

もう一度、お前を犯そうか。

顔を離すと、お前が快楽の余韻で震える手を伸ばしてきた。
また俺を拒むつもりか。
無駄な抵抗を。
抵抗……。

「何をしている」

再びお前を手荒く扱おうとする俺に、お前は抱きついてきた。
お前の気持ちなどお構いなしに乱暴な情交をした俺を、お前は抱きしめたがった。

何故だ。

俺は、お前を睨むのをやめた。
お前に任せて、身を預ける。
肌を貼り付けるように、お前の上に体を重ねた。

「一さんに、こうしたいんです」

どうやら見抜かれていたようだ。
俺の疲弊を、面倒で投げやりになった俺を、気の弱りを見抜いて俺を甘やかしている。

情けない。
しかし、やけに心地よい。

「離せ」

「ごめんなさい、嫌です」

今度は俺が抗えなくなっていた。
お前の優しさに抗えない。
温かな心地は、情交で肌が火照っただけではなく、お前の心が表れている。

「一さん、お疲れなんですね、いつも……ありがとうございます」

私だけじゃなくて、皆、みんな、世の中の人々の為に、尽力している一さん……

お前は、消えそうな声で囁いた。

それから俺を抱きしめる力を強めた。
引き剥がそうと思えば容易いのに、その気が起こらない。

「ごめんなさい、言わないほうが……良かったですね」

「全くだ」

人の言葉など、どうでもよい。
だがお前の言葉は別だ。素直な心音で聞かされる言葉に、脳が眩暈を起こす。何が揺さぶられるのか、不思議なものだ。

「余計なことを」

これ以上言うんじゃないと、唇を塞いだ。

お前の優しさは言葉にせずとも伝わる。
声にされると対応しきれないんだよ、だから今は、黙っていろ。

俺はもう一度、お前を抱いた。
労わるように穏やかに、お前が微笑むほどに優しく抱いた。
 
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