おつまみ

現】今生の出会い
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合流した俺達はぶらぶらと買い物をして食事に行くつもりだったが、夢主が家でのんびりしましょうと望み、二人で帰宅した。
俺の異変を察したんだろう。
勘のいい女だ。

「清十郎さん、」

「どうした」

ソファで寛ぎ、テレビをつけて見たくもない番組を適当に見ていると、夢主が甘えるように寄り添ってきた。
何か言いたそうだ。

「・・・昼間」

嫌な予感がして、柄にもなく俺は喉を大きく上下させて生唾を飲み込んだ。

「斎藤さんがいらっしゃいましたね、懐かしかったです」

「気付いていたのか」

夢主は小さく頷いた。
俺の心まで見抜いたように、切なく笑んでいる。
そうか、あの場に残った煙草の臭いと吸い殻、それに俺の反応。考えてみれば、分かりやすいな。

「清十郎さんが私をあの方に会わせたくないのは良く分かります。だから私も振り向きませんでした。清十郎さんが不安になるなら・・・私は振り向きたくなかったんです」

「夢主・・・」

「大丈夫です、私が好きなのは清十郎さん、記憶だけじゃありません。出会ってからずっと私を気遣って想ってくださって、優しい言葉も眼差しも、嬉しくて・・・」

俺の胸にそっと手を添えて、顔を寄せて甘える夢主の言葉は心からのもの。
胸の奥が熱くなる。
俺としたことが、愛おしさに胸を震わせるとは。

「一緒に生きていきたいのは清十郎さんです。前世を忘れた訳じゃありません。でも、私は今を・・・生きているんです」

「すまない、余計な気遣いが返ってお前を不安にさせたな」

「迷ったりしませんよ、それに前世を言うならお互い様です。清十郎さんだって大切な方がいたはずです」

そうだ、俺には確かに愛した女がいた。

「その方だってどこかで清十郎さんを想っているかもしれません。でも清十郎さんは私と出会って、お互いに・・・」

「あぁそうだな、もう言わなくていい。何も心配はいらない。お前が全てだ、夢主」

お前にどこまで言わせるつもりだ、我ながら不甲斐ない。
それ以上言うなと、俺は夢主の唇を塞いだ。

誰も入る隙などない。
お前に触れていると実感できる。

「夢主」

名前を呼ぶと恥ずかしそうにお前は俺を見た。
もう何度目だ。分からないが、俺が求めると、今でもお前の体は逃げる。
もちろん逃がしはしない、お前が嫌がっている訳ではないから。

「せいじゅぅ・・・ろ・・・さん」

服を剥がれながら俺の名を呼ぶ夢主。
瞳を覗きこむと、目を伏せて不規則な瞬きを繰り返した。

「大丈夫だ、任せろ」

「・・・はぃ・・・」

今更照れるなと言ってやりたいが、こんな初心な姿を楽しまない手はない。
俺が触れるたびにピクンと小さく見せる反応。
顔を赤く染めて、懸命に俺の求めに応えようとするお前。
そのうちに俺を激しく求めだす。

心も体も俺で埋め尽くしてやるさ。満たして溢れるほど、俺の想いをお前に伝えたい。
俺は幸せ者だ。
優しく包むしか出来なかったお前を、今宵も俺は飽きることなく抱き尽くした。
 
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