斎藤一京都夢物語 妾奉公
□1.混乱の時代へ
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「誰だ、こいつは」
「女・・・だが、何というか・・・」
ざわざわと遠くから様子を窺うが、倒れた女が動く気配はない。
沖田が近付いてそっと首筋に触れた。斎藤も傍に寄り顔色をうかがう。
「大丈夫、意識がないだけですね」
「大丈夫・・・か。見たことのない・・・」
斎藤が姿形を確認する為、女の体の上で目を動かしていると、原田と永倉も近寄ってきた。
「けったいな格好してやがるぜ」
着物とは全く違う、帯も合わせもない衣服を身に纏っている。
上下繋がった見知らぬ衣、裾は膝までしかなく、袖は肘にも達していない。
白地の衣服には控えめな愛らしい青い小花が全体に描かれていた。
「足も腕も丸見えだぜ。こりゃ異人の服でももっと隠れてるぞ」
「原田さんはそういう所ばかりに目が行くのですね・・・」
沖田は呆れて言った。
原田が「何を!」と言い返そうとした時、門番に確認を取りに出ていた藤堂平助が戻ってきた。
「誰も通ってないってよ!どうする、近藤さんも土方さんもいないぜ」
「ひとまず座敷に運ぼう。このままでは不味いだろう」
永倉の指示で、幹部が集まる時に使う部屋へ女を運ぶことになった。
座敷に運ぶ為、誰に言われるでもなく歳が最下の斎藤が女を抱える。体が浮くと、女の長い髪がさらりと流れた。
斎藤は歩きながら、童のように軽く華奢な女の血の気のない顔をじっと見つめた。
直接触れる女の膝裏がひんやりと冷たく、季節はずれの暑さに火照った己の腕にはとても心地良かった。