斎藤一京都夢物語 妾奉公

□1.混乱の時代へ
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部屋の真ん中に布団を敷いて女を寝かせ、皆で周りを囲んだ。
どうしたものかと純粋に女を心配する者、怪しむ者、白く美しかった手足を思い出し布団を見つめる者。
様々な思いが込められた沈黙が続いた。

「わたしです、入りますよ」

障子の向こうからの、少しかすれを含んだ落ち着いた声が聞こえ、部屋の張り詰めた空気を破った。

「源さん!!」

外廻りである巡察から戻った井上源三郎だ。
男達の顔が途端に和らぐ。
試衛館からの門弟であり一番年上の井上は、皆の父のような兄のような頼れる存在だった。
総髪が並ぶ中、一人頭に月代が見える。

「皆が集まっていると聞いてね。何、大丈夫。平隊士の皆には何も言っていないよ」

「源さんが来てくれりゃあ、一安心だな!」

「いやいや、とんでもない。土方さんが戻ってくるのを待たなくては・・・」

男達が話す声は徐々に大きくなっていく。
井上の言葉が終わらないうちに、女が小さく呻き声を上げた。

「気が付いたか?!」

「しっ!」


「んん・・・」

男達が緊張して口を噤む。
視線が集まる中、女の顔が少しずつ歪み、ゆっくりと瞼が動いた。

「一体・・・なに・・・なんか・・・体痛ぃ・・・」

女は独り言のように呟きながら目を擦って瞼を開けた。

「!!」

女は周囲の男達に気付き、驚き弾けるように布団で身を起こした。
辺りを激しく見回している。何度も繰り返し右へ左へと首を振った。

「へっ・・・ここは・・・あ、貴方・・・達は・・・ぇ・・・」

それは幼さの残る、それでいて艶やかな声だった。
 
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