斎藤一京都夢物語 妾奉公

□3.ここに来た意味
1ページ/8ページ


夢主は斎藤に抱えられて部屋を移動していた。
すっかり脱力しており、結局また抱えられて動く事になったのだ。
体を調べられた後、斎藤に隣の部屋に連れて行かれ、ぎこちない手付きでワンピースを着せられた。

少し離れた客間らしき部屋に着くと斎藤は夢主を部屋の前で一旦下ろし、障子を開けた。

「入れるか」

思いかけず優しい言葉を掛けられる。
背の高い斎藤は少し屈み、細いながらも優しい目で夢主を覗き込み、小さな体を支えるように部屋の中へ案内した。

「あとで不都合のない着物を持ってくるから、それに着替えろ。その服やら何やらは・・・何だ・・・人目に付かないようにしておけ」

動揺知らずに見える斎藤にとっても後の時代の下着は挑発的なのか、気まずそうに少しだけ頬を赤らめている。

・・・斎藤さんもこんな表情するんだ・・・そっか、私の知ってる斎藤さんはこれから十年以上も後の姿だから、今の斎藤さんは・・・

どこか若さを感じる。そう思うと先程の嫌な気持ちが、ほんの少し和らぐ。

「ふふっ」

「どうした」

夢主から漏れた笑みに斎藤が驚いた。

「ごめんなさい、あの・・・斎藤さんって・・・お優しいのですね」

恥じらいが残った赤ら顔が向ける微笑み。
常に冷静な斎藤ですら息を呑む表情だった。

「私は・・・どうなるんでしょうか。土方さん、私を酷く嫌ってしまったみたいで・・・」

夢主は首を傾けて溜息を吐いた。

「あの人は・・・気にするな。もともと波のあるお人だ。悪い人ではないんだが、今はちょっとな」

二人の目が合った。浪士組は行き詰っている。
そのせいで土方も荒れているのだろう。

「お前の身の振りだが、話し合っている頃だろう。俺も行って話に加わってくる。また俺なり沖田君なり事情を告げに戻るから、それまで部屋で大人しくしていろ。辛ければ休んでいるんだな」

そう言って斎藤は部屋を出て行った。
 
次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ