斎藤一京都夢物語 妾奉公

□6.副長助勤方
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夢主が目覚めると、沖田の姿は部屋に無かった。
沢山の気合の声が聞こえてくる。皆は朝稽古の最中だ。
そして障子の傍には、やはり盆が一つ置いてあった。

「うぅん・・・」

夢主は訝しげに盆の上を見つめた。

「やっぱり・・・いびつだ。最初の美味しいおにぎりは何だったんだろ・・・」

それでも添え物がされており、おにぎりだけよりは嬉しかった。
今朝はお茶も冷めていない。

食事の後、今日は何とか自分で着替えを済ませ、盆を勝手元に戻す事が出来た。
朝稽古はあまりに激しそうだったので、とても覗きには行けない。
沖田の部屋に戻るか、通り過ぎて客間に行くか。迷っていると、稽古を終えた隊士達が道場からぞろぞろと出てきた。
驚いた夢主は思わず物陰に身を隠す。

平隊士は出て行き、ある幹部は居残り稽古をし、ある幹部は外に出て行った。
道場に残っているのは斎藤達。斎藤と沖田が永倉を捉まえて何か話し込んでいるのが見える。

「何してるんだろう・・・」

客間に戻るには道場にいる彼らから見える場所を通る。
斎藤達が相手なら隠れる必要もないかと、物陰から姿を現した。
見ると、最初から気付いていたようで沖田がひらひら手を振ってくれた。
夢主は会釈して早足で客間へ戻った。


「ねぇ永倉さん、分かってますよね」

道場では沖田が怖い笑顔で詰め寄っていた。

「分かってるよ!安心しろ、俺は・・・曲がった事が大嫌いだ!」

何故これほど永倉が落ち着かないのか、ただ女好きだからか。斎藤にも徐々に心配が生じる。
あの嫌がる夢主の声は寝付きを悪くする。

「頼んだぞ、永倉さん」

「任とけ!」と声を張る永倉だがびっしょり汗を掻いていた。
 
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