斎藤一京都夢物語 妾奉公

□7.お盆の上の真実(まこと)
2ページ/6ページ


二人がそうこうしているうちに、藤堂が唸りながら大きな何かを運んできた。

「おーい、衝立(ついたて)持ってきたぞー」

「あぁ、すまんな」

衝立は土方が用意させたものだった。
昼からずっと部屋いるのなら何かと必要になるだろうと用意した。
妾役などを命じておきながら、変な所で気を使う。夢主は皮肉を感じた。

そんな思いを知らずか、斎藤は衝立を受け取ると早速程よい場所に据え置いた。

「おー!夢主すげ〜なぁ、縫い物やってんのかぁ!」

藤堂はそう言って夢主の手元を覗き込んだ。凄い凄いとしきりに感心している。
そして斎藤と同じ願いを申し出た。

「上手いなー。俺のも頼みたいな〜すげぇ傷んでんだよ!」

「いいですよ、でも・・・」

「俺の袴が先だ。藤堂君のはその後だ」

夢主の言葉を遮って斎藤が割り込んだ。
ただの早い者勝ちなのに得意顔に見えるのが失礼ながら可愛いらしい。
藤堂は「分かったよぉ」と少し拗ねて部屋を去って行った。沖田と同じでどこか無邪気さが残る青年だ。

藤堂がいなくなると斎藤は滑るように衝立の向こうに回った。
そして、するすると道着を脱ぎ始めた。

「ぇええ・・・!」

突然の出来事に夢主は頬を染めて、すっとんきょうな声をあげてしまった。
目を丸くして固まっていると、振り向いた斎藤と目が合った。

「どうした」

斎藤は何事もなかったように静かに問う。
この人にとっては特別な事ではないのだと納得し、夢主は顔を伏せて背中を向けた。

「いぇ、べべべつに・・・」

「フン。この為に衝立をわざわざ用意して下さったのだろう」

一緒にいるなら着替えに居合わせることも出てくるだろう、と。
ただ、背の高い斎藤が屈みもせず着替えているので、上半身は丸見えだ。
何なら下半身も・・・座っていても、少し首を伸ばせば腰骨の辺りも見えてしまう。
見えるかもしれない斎藤の肌を想像して、夢主は一人顔を熱くした。
 
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ