斎藤一京都夢物語 妾奉公

□8.若狼
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時を同じくして男が四人、こそこそと集まっては身を潜めていた。
斎藤と夢主が勝手元から出てくるのを見守り、気配を消して後を追う。
沖田・永倉・原田・藤堂の四人だ。
少し離れた角に隠れ、二人の様子を窺った。

「さっみぃなぁ〜今夜はやけに冷えるぜ、風邪引ぃちまうよぉ」

「しっ!静かに藤堂さん!気付かれます!」

「あぁ斎藤の野郎はやけに鋭いからな、皆黙ってろよ!」

「お前もだ左之!」

男四人、どう隠れてもヒソヒソと話し声が漏れてしまい、見つかるのも時間の問題だろう。

「あー!おにぎり!斎藤さん、おにぎり!おにぎり持ってる!」

「マジかよ、斎藤!皆との約束忘れやがって、あいつ裏切り者だな!」

土方の発案だったが、皆で示し合わせたおにぎりの約束を斎藤があっさり夢主にばらしてしまった事に気付く。

「ぁあ、きっと僕のヘタクソなおにぎりもばれちゃったんだろうな・・・」

「あっはは、あれは酷かったな〜総司!」

「夢主の奴よく全部食ってくれたよな、やっぱ優しいぜ」

「僕は剣の手は器用ですが、手先は全くもって・・・まぁ僕には必要ないのでいいんです」

ぶつぶつ言い合いながら覗いていると、斎藤と夢主は部屋に入らず縁側に座り込んだ。
冷たく突き放すかもしれないと心配したが、斎藤は夢主を実に丁重に扱って見える。

「部屋に入らねーのか」

「まぁ、その方が僕達は安心ですけど・・・」

「夢主の奴、風邪引かないかな〜」

「何話し込んでんだ、聞こえねぇな・・・おぃ、お前らちょっと黙れ!」

静かになると、斎藤の声が幾らか聞こえてきた。

「斎藤の奴、珍しく喋ってんな」

「おぃおぃ、あいつ笑ってるぜ!」

「何かぁ斎藤くん、やけにご機嫌じゃないかよ〜」

「おにぎり食べてる夢主ちゃんも可愛いなぁ・・・」

思い思いに感想を述べる男達に向かって突然斎藤が一瞥をくれた。
咄嗟に隠れたが、完全に見つかったようだ。

「やっべぇ!」

「殺される!」

「あいつマジで容赦ねェからな!」

「僕はいなかった事に・・・」

様々小声で騒ぎながら、男達は方々に散会した。
 
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