斎藤一京都夢物語 妾奉公

□9.お留守番
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近藤の部屋には幹部達が勢揃いしていた。

長州が朝廷の利用を企み、薩摩・会津藩と共に我々も及ばずながら御所を守る事に、長州を京から追い出すべく動く事になったと伝えられた。
浪士組にとって名を上げるまたと無い機会。皆が興奮していた。

「それから、歳から聞いたんだが、訳あって何やら不思議なおなごを匿っているそうだな」

土方は昨晩、近藤に夢主の存在を告げていた。
ただし嘘の下手な近藤が困らないよう、少しだけ話を変えて伝えてある。

「隠れ里の巫女で特別なお告げを受ける能力があるとか。不思議なおなごだな。その力を狙われて、我々に助けを借りるべしとのお告げに従いここへ来たと。有り難い勤めを頂いたのだ、失礼無きよう!何分、口外の無きよう!」

神仏に信仰心の無い近藤だが、ちらりと覗いた夢主の美しさに屯所に置く事を了承していた。

「不貞な輩から守る為、今は斎藤の部屋にいる。斎藤なら寝ている時に賊が来ても対応できるからな」

土方が余計な事は言うんじゃねぇと男達に睨みを利かせた。
たまたま妾奉公の順番で斎藤の部屋にいただけであり、そこに近藤が予想外に帰ってきてしまっただけだろう。
幹部の皆は冷たい視線を土方に向けた。

「僕だってそれくらい対処できますよ!土方さん」

「お前ぇは駄目だ総司!夢主の事をえらく気に入ってるじゃねぇか。間違いがあっちゃ困るんだよ!」

土方は近藤の前で沖田の胸の内をばらしてしまった。
刀を手に立ち上がる勢いだった沖田は、座り直すと悔しさから膝の上で拳をきつく握った。

「何だ総司、そうなのか?流石に預かりの身の巫女さん相手にそれは不味かろう!その点、斎藤君なら安心だ!おなごに好かれる顔でもないからな!ハハハハハ」

沖田は恨めしそうに土方を見ている。
近藤は豪快に笑い、すまんすまん!と謝る仕草を見せた。
実際怖い顔だと言われるが、意外と女に"もてる"男なのを近藤は知らなかった。

「さぁこの話は終わりだ!お前ら、さっさと支度だ!手柄を取って俺達は名を上げるぞ!!」

おぉーっ!!男達の声が低く響く。
隣の屋敷では芹沢達もまた出陣の準備を進めていた。
 
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