斎藤一京都夢物語 妾奉公

□10.誕生、新選組
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夢主が風呂から上がると、三人で時間を取ろうとなり、必然的に斎藤の部屋に集まった。
斎藤、沖田と並び、向かいに夢主が座っている。

久しぶりにさっぱりした夢主は上機嫌で鼻歌交じりに髪を拭いていた。
体は温まり、ほんのり桜色に染まっている。ニコニコと目を細め手拭いを動かしていたが、ふと二人の視線を感じて手を止めた。

「ごめんなさい、嬉しかったのでつい」

話し合いの場であると気付き手を降ろした。

「構わん。風邪を引くよりいい。そのまま拭いていろ」

斎藤が答えた。
沖田はずっと同じ表情で夢主を見ている。見られる方は気になってしまう。

「・・・沖田さん?」

「あ、いえ、すみません。湯上りの女の人ってのは・・・色っぽいものだなぁと、つい・・・ふふ」

「お、沖田さん!」

顔を真っ赤にして助けを求めるように斎藤を見るが、斎藤もその通りだぜとフフンと笑い返した。

「あ、そうそう!なんでしたっけ、うがい、手洗い、鼻と口を」

「あっ」

御所に向かう前、咄嗟に斎藤に頼んだ言伝だ。

「そうなんです!あの・・・屯所の中、ちょっと汚いし・・・」

そう言いながら部屋を見回した。
塵一つなく綺麗に整っているのは斎藤の部屋くらいなものだ。

「病気が色々流行っていたのを思い出しまして・・・世間でも、屯所の中でも」

沖田に限らず、と自分に言い聞かせ話を進めた。

「ば、梅毒は大丈夫だと思うんですが・・・沖田さんは花街に・・・その・・・行ったりは・・・」

「えぇ行きますよ、たまにはね」

訊き難い事を訊いたのに、沖田はさらりと答えた。
何かを期待していた訳でもないが、気持ちが翳ってしまう。

「まぁ女の人にお酌をしてもらうくらいですよ、あはは。僕あとは面倒なんです、そういうの。皆とお酒を呑んで騒ぐのは好きですけど」

夢主の胸の内を悟ったように、少し悪戯に笑って付け加えた。

「斎藤さんはお好きですよね」

続けて、沖田は意地悪く真実を述べた。

「フン」

実の所、忙しい日々が続き行きたくても行けない日が続いていた。
夢主が来てからは日が浅いだけあり全く行っていない。
してやったりの沖田だったが夢主がしゅんと俯き、しまったと反省した。素直さが仇となり、ついやってしまうのが悪い癖だ。
 
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