斎藤一京都夢物語 妾奉公

□14.粛清の日
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その夜、幹部達による密かな会議が開かれた。
斎藤が昼間の一件を報告し、男達の顔が一斉に強張った。

「夢主のやつ、そんな事が・・・許せねえぜ芹沢!!」

原田はやるせなさを感じた。か弱い女にする事じゃねぇと怒りを露にしている。

「粛清する意義が一つ増えたな・・・」

土方が呟くと沖田も「可哀想に・・・」独り言のように呟いた。
自然と芹沢粛清の会議に熱が入る。決行の日程と方法は既に決められていた。

「決行の準備は抜かりねぇ。明日、平隊士も含めた全員で島原に繰り出すぞ。誰も残すんじゃねぇ」

「夢主はどうしますか」

「もちろん連れ出すさ。角屋にもう一室用意させる。そこに待機させて斎藤と永倉、俺達が芹沢を送ったらお前ら合流して朝まで夢主を見てろ。いいな」

「でも大丈夫ですか、一緒に角屋に連れ出して・・・」

名指しされて心得ましたと頷く二人に対し、沖田はとても心配そうだ。
途中で芹沢らに見つかりはしまいか、数々の不安に苛まれる。

「芹沢達は付きっきりで見張るんだ大丈夫さ。そばにいて確実に合流したほうがいい。なんせ俺達総出で芹沢に酒を仕込むんだからな。屯所に置いちゃおけねぇし、連れて行くしかねぇ。芹沢達が角屋に向かう前に部屋へ案内させる」

土方は覚悟を確かめるように、皆の顔を見回した。

「万一に備えて着物は男物を着せる。いいな」

皆が頷いた。


会議が終わる頃、夢主はすっかり寝支度を済ませていた。
そろそろ斎藤が戻るのではないかと何度も障子に映る影を確認していると、やがてすらりとした人影が見えた。

「斎藤さん!」

すっと開かれた障子から現れた斎藤、その隣では沖田が「やぁ」と手を上げていた。

「沖田さん!」

もう寝る頃合。今日はもう誰の訪問も無いと思っていた。
二人が部屋に入り、夢主は衝立の裏から出て斎藤の布団の脇に座った。

「どうしたんですか」

不思議そうに沖田を見上げ、次に斎藤を見た。
沖田が意味深な視線を向けて来る。優しい眼差しはどこか不安そうだ。

「沖田君がお前の様子を気に掛けていてな」

斎藤が言うと沖田は頷いて夢主の目の前に正座した。

「こんな時間にごめんね、でも気になっちゃって。傷、見せてもらっていいかな・・・手首だけで構わないから」

夢主の事が心配でこのままでは眠れないと斎藤に頼んで様子を見に来たのだ。
心なしか沈んだ声。
夢主は黙って右手を差し出し、寝巻きの袖をすぃと引いた。

「っ・・・」

華奢な手首にある、男の手で付けられた大きな痣。
沖田は顔を歪めた。
 
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