斎藤一京都夢物語 妾奉公

□16.湯屋通いと屯所への帰還
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朝御飯を終えると、斎藤と沖田がおもむろに刀を差した。
置いていかれるのかと淋しさが沸いてくる。

「どこか行かれるのですか・・・」

「お前も一緒だ。湯屋へ連れて行ってやる」

昨日は酒宴。今日も屯所へ戻らない。
出来た時間を活かして湯屋へ連れて行ってもらえることになった。

「本当ですか!ありがとうございます」

「一番近い場所でいいか」

「はぃ・・・」

一旦頷く夢主だが、ある記憶、知識が蘇り考え込んでしまった。

「湯屋ってその、混浴・・・男も女も一緒の湯っていうのが殆どって・・・覚えがあるんですが・・・・・・。別々の所が、いいです・・・」

斎藤の眉間にだんだんと皺が寄り始め、夢主の声が小さくなっていった。

「もしかして一緒に入ってやろうとか・・・か、考えてたんですか・・・」

「阿呆ぅ、面倒臭いだけだ」

ぷぅっと小さく頬を膨らませて呟くと、斎藤はぶっきらぼうに言って出口に向かった。
今日は男装ではなく、休息所にあった女物の着物を着ている。女の姿でそう言った話に無反応なのも少し寂しいと感じてしまった。

「あはは、お湯に浸かるのに服を脱ぐのは当たり前ってほとんどの湯屋が男も女も一緒ですからね、ちょっとだけ遠くなるんですよ」

一緒に歩ける時間が増えるのですから僕は遠くても構わないですけど、と沖田は笑った。

「普段は女の人も肌を出す事にとても気を使うのに、なんでお風呂では一緒になっても平気なんですか?私その感覚が全然分からないんですけど・・・」

そう言われてもねぇと困る沖田だが、確かに夢主と同じ湯に浸かるなど考えられない。
斎藤は躊躇なく肌を並べて入りそうだ。沖田は無関心を装う斎藤の背中を見つめた。

実際若い娘が湯屋に入る時は、母親や小母さん連中が囲んで悪意ある不貞な輩から守るらしい。
そこまでしてどうして混浴なのかが夢主には全く理解できない。

「簡単な理由だ、二つに分ければ手間も湯も倍必要になるだろう」

「そっか・・・節約になるんですね・・・」

最もな理由を突き付けられ、夢主は大人しくなった。
 
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