斎藤一京都夢物語 妾奉公

□54.謹慎の最中
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三人揃っての謹慎を言い渡された。それを理由に沖田は斎藤の部屋で共に眠ると言い出した。
一晩限りと思われたが、斎藤と夢主の冷静さを保つ為、暫く夜を共に過ごすと宣言は変わった。

夢主は着替えの間、外に出てくれた二人を呼び戻そうと障子を開いた。
いつも通り穏やかな顔で振り返る二人がいる。
つい今しがた苦しげに本音を語っていた事など、微塵も感じさせない。

「お待たせしました、着替え、終わりました」

「ふふっ、寝巻姿、やっぱり可愛いね」

「おっ沖田さんっ!」

「フン、俺も着替えるぞ」

夢主の白い寝巻姿を見て微笑む沖田に斎藤は冷たい目を向け、興味がない素振りで部屋へ戻った。

今度は自分が邪魔にならないよう、夢主が衝立の向こうへ回る。布団に座ると、沖田も何故か隣へやってきた。

「沖田さん?」

「ん?斎藤さんの着替えの邪魔にならないように・・・」

「沖田さんは別に・・・」

沖田は動こうとせず、にこにこと笑んでいる。
目の前で見つめられる恥ずかしさで、夢主は顔を逸らした。
今の沖田に縋るような幼子の陰は無い。

目のやり場に困った夢主は、つっと首を伸ばして斎藤の背中に目を移した。

以前目にした時から変わらない、傷のない美しい背中。見事な筋肉で覆われ、大きくてとても頼もしい。
すらりと背の高い斎藤は細く見えるが、鍛えられた本当の姿には目を奪われてしまう。

夢主が斎藤の背に目を奪われていると気付いた沖田は、愛らしい頬に手を添えて、顔を無理やり自分へ向けた。

「駄目ですよっ、あんなもの見ちゃっ」

「うっ・・・」

見惚れていた事がばれて気まずいが、斎藤の背を見ていたかった夢主は、変な声を出してしまった。
沖田は手を離すと首を傾げて、目をぱちぱちしばたきながら問い詰めた。

「夢主ちゃん、いつも見ているんですか」

「えぇっ、そんなっ、は、はしたいないことはっ」

焦って否定する姿は、沖田の問いを返って肯定している。

「へぇーっ・・・」

沖田はわざと不満な瞳を向けた。
口元は笑っており冗談だと伝わるが、見据えられると心苦しい上に、照れくさい。

「見るつもりはないんですよっ・・・」

盗み見した言い訳が続かず、困って目を伏せた。
伏せた目が焦りで泳いでいる。

「ふふっ、可愛いね夢主ちゃんっ。頬を染めて俯く夢主ちゃん・・・寝巻姿で向かい合う布団の上・・・なんだか、ほやほやの夫婦みたいですね」

「そ、そそそっ!めっ、めおとだなんてっ!!」

「ははっ!夢主ちゃん面白い!」

沖田の素直な発想を、夢主は顔を真っ赤にして否定した。
斎藤の前でそんな事を言わないでくださいと思わず口にしそうになる。

「着替え終わったぞ。しかし沖田君もなかなかの好き者だな」

斎藤は真っ赤になった夢主と、夢主を揶揄い続けた沖田を衝立越しに見下ろした。
 
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