†テイルズ短編夢†
□2月14日
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もうすぐ大切な人に想いを伝えるチャンスが来る日……
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「……うーん」
バンエルティア号の甲板で一人項垂れている女の姿があった
「…そもそもこの世界ってバレンタインなんてイベントあるのかな?」
そう呟く彼女、ハヤテはこの世界とは異なる言わば異世界から来た者であった
故に、この世界のイベントについては理解していない
「誰かに聞いてみるべきか……あ、エレノア!」
「ハヤテ、どうしたんですか?」
「あのね…バレンタイン……ってイベントある?」
「バレンタイン?さぁ…そのような行事は聞いたことがありません。どのような行事なんですか?」
「えっと、自分の好きな人やお世話になってる人達にチョコレートをあげるイベントなんだけど…」
「ああ!感謝の意を伝える行事ですね!それなら私達の世界にもあります。特別な名称はないのですけど、ハヤテの世界ではバレンタインと呼ぶんですね」
あったんだ……と内心思いながら、心の中では別の感情が出てきていた
「で、ハヤテは誰かにあげるんですか?」
「うん。皆にあげるつもり。アイフリード海賊団の皆とベルベット達に」
それを聞いたエレノアはとても優しい笑みを浮かべていた
「ふふ…本当に優しいですね、ハヤテは」
「だって…皆お世話になってるし…」
ハヤテは少し照れくさそうにそう答えた
「なら、私も皆さんにあげなくてはいけないですね。あ…でも、ライフィセットとモアナには特別にしてあげるつもりです」
「エレノアの方が優しいじゃん」
あははは!と笑いながら二人で雑談していると
「あんた達、そんな事に時間を費やすつもりはないわよ」
「何じゃ、乙女の一大イベントを蔑ろにするつもりかえ?ベルベットや」
下らない…とため息を付くベルベットとは裏腹に、やたらと楽し気なマギルゥ
そんな二人を複雑な表情で見ていると
、いきなりベルベットが思いもよらないことを言い出した
「ハヤテ、あたし達にあげるつもりならその分をアイゼンにあげなさいよ」
……………はて?
「気付かれないと思ってたわけ?自分の事となると本当に鈍いわね、ハヤテは」
「ベルベットに言われたくはないのぉ。のぉ、ハヤテや♪」
「えっと……ベルベットの言ってる意味が分からないんだけど」
ハヤテは本当に分からないと言う顔をしてベルベットを見つめていた
「態度見てればバレバレよ。ま、当の本人は気付いてないみたいだけど」
「ハヤテ!!そうだったんですか!?」
「……ここにも気付いてないのがいたのね」
エレノアが凄い勢いで肩を掴み揺さぶってくる
その顔付きは興奮と興味が駄々漏れだった
「ちょ、エレノっ、気持ち悪くなる!」
「あ…す、すみません……つい…」
エレノアは申し訳なさそうに下を向きながら手を離してくれた
「で、どうするのよ。全員にあげるって言うなら止めないけど…あいつは特別にしてあげてもいいんじゃない?」
「ベルベット…やけに肩を持ちますね」
「べ、別に!そう言うわけじゃないわよ!」
「ほっほ〜う?ベルベット…お主も乙女じゃの〜♪煮え切らない二人を見て恋のキューピットになろうとは♪」
「違う!」
顔を赤く染めたベルベット…レアだな、等とどうでもいい事を思いながら当の本人は
「あたし、アイゼンさんの事は好きだけど恋愛対象って訳じゃないよ?」
ピタッ…
今まで言い争っていた声がぴたりと止まった
そして、振り返ったベルベットとマギルゥの呆れたような哀れな人を見るような…そんな顔をしていた