コ/ナ/ン

□1章 DC
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朝、雀のさえずりを聞きながら私は小さな布団から起き上がる

まだ覚醒しきれていない脳を叱咤しつつ、階段をふらふらしながら小さな足で降りていく

そして、一階にいる母親のもとへと向かう

「おはよう名前、顔を洗ってきなさい」

「はーい」

私は素直に頷き洗面所に向かい、冷たい水で顔を洗い、手近かにあったふわふわのタオルで顔をふく

鏡に映る顔はまだ眠そうだ
そして、10歳児の顔に少し肩を落とす

「大人だったのにな……」

私は何を隠そう前世の記憶がある
しかも、30歳くらいまで生きてまぁ色々あり死んでしまい、今に至る

何はともあれ二度目の人生なのだから一回目の経験を大いに活かそうと、前向きに今を生きております

前世では警察官になりたかったのだが、あまりの運動音痴でなれなかった

今回こそはと思いつつ、リビングに向かうべく、ドアのぶに手をかけると
バキッという音と共にドアノブが自分の手の中に収まる

「また、壊したのね〜本当にあなたは怪力なんだから」

お母さんがため息をつきながらやってくる
それにニヘラと笑いながらドアノブを渡す

「えへへ〜またやっちゃった」

「まぁいいわ、ほらはやく朝御飯食べちゃいなさい」

「はーい」

いつもの朝の日常に母も私もなれてしまった

「いただきまーす」

バキッ

「箸が…………まぁいっか」

私は短くなった箸を器用に持ちながらご飯をかっこむ

「いってきまーす!」

ランドセルを背負い、玄関のドアを開けると

バキッ

「……これは、まぁいっかで済ませられない」

私は即座にランドセルのなかにあった釘やトンカチを使い、ドアノブを直すがものすごく不格好になってしまった

「まぁ、いっか
いってきまーす!」

ここまででわかると思うが、私は異常なほどの怪力だ
今は大分加減を覚えるようになったが、昔はもっと悲惨だった
なにしろ洋服もまともに着ることができなかったのだ

でも、今では服を破くことなく着ることができる!誰か褒めてほしいものだ


「おはよー名前ちゃん」

いつも一緒に登校する優ちゃんだ

「おはよー、今日の給食なんだろうね」

「…………まだ朝だよ?名前ちゃん」

そんな会話をしながら小学校に向かう私、怪力少女こと、名字 名前はやはり学校でも数々の問題を起こしている



今日は朝から体育だった
私は肩を落としながら体操着に着替える

「マラソンか〜名前ちゃん頑張ろーね」

「う、うんそーだね」

体育…………私は今回の人生でも運動音痴であった
いや、前世より更に磨きがかかった気がする


体力はないし、ボールを投げれば怪力のお陰で、遠くに飛ぶがあらぬ方向に飛ぶ

その代わり、パンチ力と腕力は自信をもって自慢できる
でも、喧嘩とかも苦手だし…………

やっぱり、今回も警察官にはなれないのか

いやいや、諦めたらそこでおわりだ!と誰かが言っていたじゃないか
よし!頑張れ私

「あれ?誰もいない」

さっそく置いていかれた私は急いで外に出たのだった



授業をおえ、下校時刻となり私はランドセルを背負って、プラプラと帰宅する

大きな道路を横断しようと、信号が青になるのを待っていた時だった
何故か向う岸で待っていた私より小さな男の子が、道路に向かって走ってきた

おいおい、まだ赤信号だぞと思いつつ私も無意識に足が前に進んでいた

そして、車が男の子に迫る
そりゃあそうだ、車は青信号なのだから走るのは当然だ

当然ではないのは私達だ
交通ルールを大いに無視をしている

その交通ルールを無視する人物がまた一人増えた
その子は私と同じように小さな男の子に駆け寄り、その男の子を守るように抱き込んでいる

しかし、車は刻一刻と迫ってきている

私は車の前にでて、車のナンバープレートの辺りを両手で受け止める
そしてその車を一気に持ち上げる

さすがに少し重いかなと思いつつ、そっと車を置いた
でも、仮に車が私に衝突してもかすり傷くらいしかならないだろう
それほど何故か私は頑丈にできている

私は汗をぬぐいながら、不意にまわりの声に気づく

いつの間にか集まってきた人達に、私は顔から血の気が引いてくのがわかる

「やっちゃった、逃げなきゃ」

私はそそくさと逃げようとするが、それは叶わなかった
なぜなら、私の手を掴む黒い手があったからだ
その黒い手は小さな男の子を庇った勇気ある男の子だった

「まって、君」

「ご、ごめんね、私急いでいるから」

小さな男の子を庇った男の子の手をそっとほどき、走り出す

案外簡単に逃げることができてほっとしながら、私は帰路に着いたのだった

「それにしても黒かったな」

褐色肌と言ったほうがいいのかな?それに薄茶色の髪の毛…………日本人なのかな?

私はもう二度と出会うことがないであろう人物を思いながら、家にたどり着いたのだった
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