ジョ/ジョ短編(長編の番外編)

□ディオルート
1ページ/6ページ

花京院君と別れてから数ヵ月が経過したときだった
私の部屋に一人のお婆さんが立っていた

その人はエンヤ婆と名乗り部屋に入ってきた
そして私のスタンドが見たいと言うため、エンヤお婆さんに手を差し出してもらい、その皺が刻まれた手を握る

天女をだして、能力を使う

「・・・・・・どうでした?」

「・・・・心地よい・・」

エンヤお婆さんは目を細めて、穏やかな表情をする
その表情を見るだけで私の心も満足感に満たされる

「・・・・わしも、手を握った時お主の未来を占ったぞ」

占いのお婆さんだったんだと驚いてしまう

「で、どうでした?」

手相占いは初めてで、少しわくわくしてしまう

「……数日後、お主には二つの選択肢が与えられるだろう」

まるでお告げのような口調のエンヤお婆さんに驚きつつ黙って耳を傾ける

「一つは、世界がこの世から消え去る道……もう一つはその世界をお主が守る道じゃ」

世界?この世界ということだろうか?
でもそんなだいそれた使命は無いと思うけど
私は勇者でも英雄でもない……ただこの世界に取り残されたひとりぼっちの女だ

「このまま行けば世界は消える運命にある」

「え?……世界が消える?
ど、どうやったら世界は消えないですか!?」

この世界が消えてしまったらディオやバニラさん、テレンスも消えてしまうことになってしまう
それだけは嫌だ

「……それはお主が世界を守れば良いことじゃ」

守ることなんてできない
そもそも何から守ればいいのかもわからない

隕石とか?そういった類いしか思い浮かばないし

「真っ暗な道を進み、星から世界を守れば良いと出ておる」

やはり隕石のことを言っているのかもしれない
しかしこんなちっぽけな体でどう守れば良いのだろうか?

もしかしたら私のスタンド能力には隕石をはね飛ばす力が備わっているのか?
いや、ないない

そんな都合よく能力が開花するわけない

「世界が消えるとき……エンヤお婆さんはどうしてるの?」

エンヤお婆さんは少し遠くを見ながら不意に背を向けてしまった
そのため、その顔も見ることは叶わなくなった

「さぁな、老いてる体じゃからな……
その頃はもう既にいないかもしれないのぉ」

そういって部屋をでていってしまったエンヤお婆さんに私はペタリと床に座り込む

どういうこと?
おそらくエンヤお婆さんの占いは当たるだろう
だからこそディオだってエンヤお婆さんを側に置いている筈だ

でも、世界が消える?
それはディオなどは知っているのだろうか?

「考えても仕方ない……今度エンヤお婆さんに聞いてみよう」

そう思い、エンヤお婆さんが訪れた際に伺うと……

「……それはお主自身で考えねばならんことだ
ただ一つだけ言えることは……星を見つけることじゃな」

と言われるだけだった
エンヤお婆さんはタロットカードを出しては色々なことを占ってくれたが、その世界のことについてはもう占ってくれなかった

そうこうしていると、エンヤお婆さんは私のもとへは来なくなった

ディオはエンヤお婆さんは仕事に出たと言っていたが……

それは違うと私は悟った


『さぁな、老いてる体じゃからな……
その頃はもう既にいないかもしれないのぉ』

その言葉が頭のなかをぐるぐるとループする

おそらくもう既にエンヤお婆さんはこの世からいなくなってしまったのだ
でもディオは私を傷つけまいと思い嘘をついたのだろう

「ねぇ、ディオは……」

最近忙しそうにしているディオだが、今日は私の部屋のベットに座り本を読んでいた
そのディオの横に座り私は横を向く

「世界がどうなるか気になる?」

するとディオは赤い瞳で私を見つめ、本をゆっくりと閉じた

「……気にならないと言えば嘘になるが
それを言ったところでおまえは世界の行く末を知らないだろう」

確かにそうだ
しかし私はエンヤお婆さんにこのままでは世界が消え去ると告げられた

それをディオに伝えれば何か変わるかもしれない

「知ってると言ったらどうする?」

「おまえは、異世界人であって未来人ではなかろう」

その言葉に私はひとつ、ある可能性を見つける
もしかしたら、世界とは私の元いた世界のことを指していたのかもしれない
だったらディオに相談してもそんなもの自分には関係ないとはねのけられてしまいそうだ

「……やっぱりこの話はなし!
急に変なこと言ってごめんね」

私がいた元の世界が消えるというのならば、それこそ私はどうすることもできない
大切な友人を守りたいとは思うが、今の私には何も出来ない

「……世界か
このDIOが目指す世界にはおまえも含まれている
それを忘れるな」

ずるいな……
そんなことを言われてしまったら傾いてしまう
元の世界はどうなっても構わないなんて最低な考えがでてきてしまう

「私も……ディオがいる世界で生きたいな」

もしこの人が死んだら私はどうなるだろう
この館からでていく?それとも私も後を追うのか

それはわからない
でも、私はきっと嘆き悲しむだろう

「おまえは生きろ、どんなことがあってもだ」

そう言いながら私の頭を優しく撫でるディオの指は冷たかった

でも温かいその気持ちは伝わった

「ディオは殺しても死ななそうだけどね」

実際問題、本当に不死身なのだろう
私の波紋でも殺すことができるかどうかわからないくらいだ

「もし、我が殺されたらおまえはどうする?」

間近で見るその赤い瞳は何故か胸がゾクゾクする

「……殺した相手を憎むだろうね
でも、私は甘いから最後はその人のことを許してしまいそう」

ディオは色んなところで恨みをかってそうだ
昔の私だって、ディオのことを殺したいほど憎んでいた
だからこそ殺す気持ちもわかるのだ

「それでいい……
おまえが苦しまんのなら俺は相手に復讐しろとは言わん」

意外だと思った
ディオのことだから、自分の代わりに復讐しろと言ってくるかと思ったが

「ディオは優しくなったね」

本当にディオは変わった
いや、変わったというより戻ったのかもしれない
ディオは元来優しい人間だった
ただ、心の一部が歪んでいただけ

「……フン
俺は優しくなどない」

そっぽを向いてしまうディオが子供っぽくて少し笑ってしまう

「そっか……
なら私が殺されても復讐なんて考えないでね」

ディオはおそらく私が死んだら怒り狂うだろう
そう思えるほどディオは私に気持ちが向いている

「それは約束できんな」

「約束しなくてもいいよ
ただ私が復讐なんてものは望んでないと思っておくだけで」

それだけでディオは思いとどまってくれるかもしれないから……

「それ以前におまえを死なせはせんがな」

「……ありがとう、ディオ」

こんな日常が一生続いてほしいと願うのは罪なのだろうか
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ