コ/ナ/ン

□3章 DC
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黒君が肩を痛めて部活を辞めてから約半年が経過した冬休み

私は家で受験勉強をしていた
将来の夢が警察官だから、そこそこいい高校に入学するべきだと思い、ここからさほど離れていない公立高校に入る予定だ

黒君もそこを受験する予定だと言っていた
お互い頑張ろうと励ましあいながら勉強している






そして、高校受験もおわり無事に二人とも同じ高校に入学することができた

こうして考えると、黒君とは長い付き合いとなるなと思いながら、新しく購入した制服に身を包む


「よし!いってきます」

今日から電車通学になる私は、徒歩で駅まで行ってそこからは電車に乗る

電車に乗るのは今でも慣れない
更に人が密集しているときは、必ず私は腕をあげて人に触れないようにと細心の注意をはらう


やっとこさ電車を降りて、高校にむかう
今日から新しい生活が始まるのだと思うとワクワクする反面、緊張の方が上回る


お決まりの入学式が始まり私は気を引き閉める

「新入生代表、降谷 零」

「はい」

新入生代表に選ばれたのは黒君か、ブレザー姿に身を包んだその姿は、中学生の頃とは別人のようだ

凛とした態度で壇上にあがり言葉をのべている黒君に私は微笑む
本当に成長したな〜
こんな大勢の前で堂々としている
将来は大物になること間違いなしだ



そして入学式もおわり、教室にはいると

「あっ、望ちゃん!」

「名前ー!やったね、同じクラスだ」

中学校からの友人、佐伯 望ちゃんが同じ高校に入学して同じクラスになった
これだけで私の高校生活は薔薇色になること間違いなしだ

ふとまわりを見渡すと黒君はいない
まぁいつかは同じクラスになれるかと思いながら、席に座る

「それにしても、降谷君凄かったねー」

望ちゃんが感心しながらそう言っている
確かにこの前まで中学生だったとは思えないほどの熱演だった

「確かに凄かった」

そんな話をしていたら担任の先生が入ってきたから、話を切り上げた


そしてホームルームもおわり、部活見学時間となり、望ちゃんとは別れて私も自分が興味がある部活動の見学に行こうとした時だった

「降谷くーん!一緒に見学しにいかない?」

「いや、私と!」

廊下ではそんなドラマやアニメでしか見たことがないような光景が広がっていた

黒君を取り合うように腕をぐいぐい引っ張っている女の子達がいた

中学では流石にこんなことはなかったのに、さすがは高校だな

私はその人混みを遠目に見ながら、そそくさとその場を去ったのだった

「今回はボランティア部は無いのか…………」

部活動紹介の一覧表を片手に校庭が見えるベンチに座る

「警察官になるなら今から体力もつけたいけど…………」

絶対ものを壊しちゃうだろうし
陸上ならいくらなんでも壊すものもないし良いのでは?と思ったが、ストップウォッチなど、小物類を壊してしまうだろう

まぁ壊すぶんにはいいけれど、それが噂になって怪力女と囃し立てられたら困る

こういうときばかりは、自分の化け物じみた力が憎らしい

そういえば黒君は部活に入るのだろうか
あの子なら何をやってもそつなくこなすから大丈夫だろう

「あーあ、何しようかな」

もういっそのことアルバイト漬けの毎日を送ろうかな

それも体力をつけられるようなバイトをしよう
うん!そうしよう!

そこからの行動は早かった
パソコンで体力をつかうアルバイトと検索して調べあげる

「引っ越し業者のアルバイトか…………よしこれにしよう」

さっそく電話で面接の日取りを決めて、とんとん拍子で合格した
面接の時に自分の力を示すために、大きな机を片手で持ち上げる姿を見せたら一発合格だったのだ

「明日からバイトがんばるぞー!」

リビングで両腕をあげて自分を鼓舞したのだった
しかし、このときの私はまだ知らなかった
怪力女にはバイトは難しいということを





バイトの日、やはりといったところか、男ばかりで肩身がせまい思いをしながら仕事に入った

しかし、やりだすと男も女も関係なく荷物を運び出す

「これ、梱包して」

壺を渡され、そっと受けとる

「あ、はい!」

マニュアルで見ておいた梱包の仕方を思い出しながらやる
しかし…………

「おいおい!おまえそんなに縛ったらわれるだろ!!」

「ご、ごめんなさい!」

私の馬鹿力はここでも私の邪魔をしだした
運ぶ作業は良いのだけれど梱包となると力加減が難しく、全て壊しそうになってしまった

そして案の定、一週間が経過した頃にはやんわりとクビを言い渡された

「いやいや、まだまだ!次がある!」

私は片っ端からアルバイトをするようになったが、どれもこれもクビにされてしまった

私って、働けるのかな…………
急に将来の不安を抱き始めてしまった

そんな不安を拭うためにも目の保養をしようと思いながら、新ちゃんの家へと訪れた

「お邪魔します」

「あら、いらっしゃい!
高校入学おめでとう名前ちゃん」

「ありがとうございます、有希子さん」

「でも、元気がないわね?どうかした?」

私はアルバイトがことごとく失敗続きだということを話した
幸い、有希子さんは私の怪力のとこを知っているからこそ話しやすい

「そうなの〜?でも、名前ちゃんならすぐに見つかると思うわよ?」

何故か有希子さんにそう言われると、本当に見つかるような気がしてくる

私は有希子さんが淹れてくれた紅茶を飲みながら、そろそろ新ちゃんのもとへ行こうとした時だった

「そうそう、新ちゃんなら蘭ちゃんのところにいるのよ〜」

「蘭ちゃん?」

あの空手が得意な蘭ちゃんですか?とは聞けずに一応質問しておく

「そうなのよ〜私の友人の英理の子供なんだけど
すんごく可愛いのよね」

そうか、もう蘭ちゃんと出会っているのか
じゃあ今日は新ちゃんとは会えないのかと肩を落としていた時だった

「新一なら夕方に帰ってくると思うよ」

奥のドアから出てきたのは優作さんだった
コーヒーを片手にやってきたその姿は本当に様になる

「本当ですか?良かった」

私は受験勉強などで忙しかったから、新ちゃんとは半年くらい会っていなかったから、久しぶりに会えると楽しみにしていたから良かった

「ああ、だから夕方までちょっと手伝って欲しいことがあってね?
いいかな?」

「はい!もちろん!」

私は二つ返事で首肯く
お世話になっている方のお願いを聞かないわけがない

「優作、あまり名前ちゃんをこきつかわないでね」

「ハハッ、大丈夫だ
よし、行こうか名前君」

そうして私は優作さんについていくと、本に囲まれた部屋に案内された
ここは優作さんの部屋で、入ったのも初めてだ

「実は模様替えのために掃除をしたくてね
でも、本棚をどかすことが出来ないんだ」

「任せてください!」

私は胸をどんと叩き、本棚を持ち上げて廊下に移動したりと、重いものを運び出す
こうやって体を動かすだけで、バイトの悩みなどを忘れることが出来た


何だかんだと夕方になってしまい、夕陽が窓から漏れている

「いや〜綺麗になった
ありがとう」

そう言って夕陽に照らされている優作さんを見上げる
そして優しく頭を撫でてくれるその手に、私は少し恥ずかしくなる

一応、中身の年齢はすごいことになっているからな
おそらく、前世と合わせたら優作さんより年上になってしまうだろう

「いえ、お役に立てたなら嬉しいです」

「君は本当に凄いな」

いきなり凄いと言われても何のことだ?と首をかしげてしまう

「力持ちなのは知っていたが、ここまでとは思わなかった
名前君には名前君しかできない事は沢山ある
これからそれをゆっくり見つけていくといい」

そうか、優作さんは私がアルバイトをクビになってしまって落ち込んでいることを知って、私に出来ることをさせて元気づけようとしたのかもしれない

本当に私は多くの人に見守られているのだなと思いながら、優作さんをまっすぐ見つめる

「ありがとうございます、優作さん」

すると下から元気な声が聞こえてきた

「姉ちゃん!ただいま!」

「おかえり、新ちゃん」

元気よく挨拶をする新ちゃんの姿に私は自然と笑顔が生まれる

私はこの人達からもらったものをいつか返していきたいな
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