アスキラ♀

□月の出会い
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翌朝、がらにもなく緊張していたのか予定よりも早くに目が覚めてしまった。リビングに向かうとちょうど母が出かけるところだった。

「あら、アスラン早いのね。おはよう」
「おはようございます。母上も」
「引っ越し早々慌ただしくて悪いのだけど、わたしも今日から研究所へ行くわね。ちゃんと朝食食べるのよ」
「はい」

行ってきますと頬にキスをされ、広いリビングに一人残されたアスランはいつも通りの静かな朝食をとるのだった。

(暇だな…少し早いけど行くか)

朝食を終え、またやることがなくなる。この屋敷から新しい学校までは徒歩15分ほどだと聞いている。昨日渡された地図も頭に入っているから迷うこともない。けれどあまりにも暇で散歩がてら早めに出掛けることにした。

玄関を出ると、なにか騒がしい。どうやら隣の家屋から聞こえてきているようだった。アスランの屋敷と同じくらい広い屋敷のようなのに、その声はよく外まで響いていた。

「なんで起こしてくれなかったのさー!!」
「なに甘えてるの!それに何度も起こしたわよ!」
「今日日直なのにー!」
「お父さんが送っていってやるから、ほら急げ!」
「うわーん!寝癖がー!!」

バタバタと喧騒とともに一人の男性が飛び出してくる。そのあとを追うように小さな影がもう一つ転がるように出て来て、二人で車に飛び乗るとあっという間に走り去っていってしまった。

新しい隣人への挨拶のタイミングを逃してしまったアスランは、賑やかな家庭だなと自分の家族とは正反対の隣家を横目に歩き出した。
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