グリチネ

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学校から移動して来たのは俺たちの家の近くの行きつけのカフェ。
ここならあんま学校の奴は来ねぇからコイツも話しやすいだろ。

「めっちゃ美味しいんだけど何これ」

久しぶりの再会だというのにシフォンケーキにがっついてるコイツは見た目こそ成長してるもののまだまだガキだと思って少し安心した。

「家近ぇのにこねぇの?」
「私がカフェ巡りなんてお洒落なことすると思う?」
「まぁな。俺はカフェ巡り趣味だけど」
「うわ、そんな感じするわ。
いいですね余裕のある人は趣味もお洒落で」
ちょっとした悪態をつかれるくらにはリラックスした空気が流れて間は空いていたもののやっぱりあの時と変わらない優愛だなと感じた。

「他にも美味しいカフェいくつか知ってるけど行くか?」
「え、いく!」
そう言って目を輝かせる。
こういうころころ表情が変わる感じも全然変わっていない。

なんだかんだ優愛を見ているのが楽しく本題に入るのを忘れていたので話を振れば

「で、なに話って」
「分かんないの?」
「五年ぶりにいきなり学校まで押しかけられても分かんねぇ。」
「そもそもそこから話したいんだけど。」

俺は大分見た目が変わったがアイツはあのまんまで怯えたりすることもなく淡々と話している。むしろ少し怒っているようだった。

「家出たなんて聞いてないんだけど」
「俺らもう幼なじみでもないんだから別にいいだろ、俺がいなくたってお前も変わらねぇだろ」
「変わらないなんてそんな事ない。
私万里と話せなくてどれだけ寂しかったか……」
「は?」

寂しい?
小六の時一切反論してこなかった優愛が?

「なんで今更言うんだよ」
「怖くて言えなかったの。
でも万里家出てっちゃったし、もういっそこじれてもいいからちゃんと言おうと思って。」

いつも俺の後に引っ付いてきていた優愛。
当時小6だった彼女を引き離した時、本人はすごくショックだったのが「寂しい」と言われて強く痛感した。

「悪かったな」
「!謝った!!」
「お前俺をなんだと思ってんだよ。」
「じゃあこれからも話しかけてもいいの?」
「え?いやでも俺家出たし学校だって違うし会わねぇだろ」
「やだ。」
「やだって」

16にもなるのに随分わがままに育ったもんだ。まぁ小さい頃から周りに甘やかされて育ったし、俺の姉貴なんて会う度にいろんなもの上げてるみたいだし。かくいう俺も大分甘やかしちまった自覚はあるけども。

「あーじゃあ連絡先教えてやるよ。」
「え!?」

俺の言葉に目を輝かせる優愛は本当に可愛い。

「また学校押しかけられても困るし」
「ありがとう!」

そう言って5年ぶりに会って話した俺達は連絡先を交換した。

コイツと仲直りとかそんなつもりでいった訳ではない。でも寂しい思いをさせたという反省と学校には押しかけられたら困るからだ。

でもやっぱなんだかんだ俺もほんとにコイツに甘いな。


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