グリチネ

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それは突然母から言われた。

「ちょっと優愛、万里くん家出たんだって知ってた?」
「は?」

万里くんというのは私の一つ上の幼なじみ。家が隣同士で親同士も仲が良いので摂津家との交流も深い。

深いのだが、彼万里とは別である。

「知らないよ、ていうか私万里とは喋んないし。バーベキューとかにと来てくれないし。」
「万里くんは恋人がいたり忙しいみたいよ、アンタももう高2なんだから好きな人くらいできないの?」


遡ること五年前
あっちが中学に上がってすぐ
「ガキのお守りは飽きた。仲良しこよしはやめだ。」
と言われ小学生だった私はショックで何も言葉が出なかった。


男の子と女の子の場合女子のが大人っぽいとよく言われるが、私たちの場合は逆だ。万里はすごく大人びている。一つしかない差がいつも小学校と中学校に分かれてとてつもなく大きく感じた。だからこそ、それに比べいつまでも子供っぽい私に飽きてしまったんだと思う。
それから5年が経ったが、私達はあれ以来一切会話をしていない。

「うるさいな、学校の男子とはほとんど喋らない。」
「あーあこじらせちゃって。お母さん心配。」

そして、万里は一人っ子の私にとって兄同然の存在であった。
そんな兄からの突然の拒絶。
とても悲しく、人のせいにするのは良くないとは思うが私は人見知りをこじらせている。

小さい頃から万里はとても目立つ存在だ。
整った容姿はもちろん、何をやっても卒無くこなせる。いつも私の面倒を見てくれていただけあって優しい。
そんな万里がモテないわけがなかった。

「てゆーか万里と比べないでよ。あんなハイスペック男超えられないよ。」
「あんた昔から万里くん大好きだったもんね。」
「いや今そういう話してないじゃん。」

同じ中学にいたころ、万里の彼女の噂絶えなかった。
噂で私が聞いただけでも10は軽く超えている。
でも私が大好きな万里を噂からは感じることが出来なかった。もう私が好きだった優しい兄のような万里はいないのかと思うと寂しくてたまらなかった。

「仲直りしないの?」
「仲直りって喧嘩じゃないからこれ。私が一方的に切られただけだから。」


あの日の拒絶を思い出すと怖くて怖くて、1歩踏み出せないでいる。そんな愚かな自分が嫌いだ。


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