グリチネ
□7
1ページ/4ページ
あれから天馬は万里のことを聞いてくることは無かった。
だが、大きな変化は起きた。
「校門にいるのって、摂津万里さんじゃない?」
「そうそう!カッコイイ〜。」
「スタイルいいよね、モデルみたい」
なんで?
O高の校門の前に万里がいた。こないだ私が花学の校門前にいたように。
やっぱ遠くから見てもカッコイイな〜と思っていれば周りも同じようだった。教室から校門を見てる生徒がたくさんいた。
「彼女じゃない?」
「ああ。そういえば三浦さんと噂あったよね」
あ、それ違いますよ。
実際は空白が5年間空いたただの知り合いです。しかもまた空白が始まりそうですよ。
彼女か。まあ万里見た目完璧だし、頭はいいし、ちょっと無気力なとこあるけどそれをカバー出来るくらいには完璧だからいてもおかしくないけど。なんだろね、少し寂しい。
「いやちげーよ。兵頭さんだろ」
「ああ。ケンカしに来たんじゃね」
そういえば仲悪いんだっけ。
ケンカはして欲しくないけど言える立場じゃないし。見ないのが一番だな←
さっさと帰ろう!
そう決めてすぐにカバンを持って教室を出た。玄関から万里がいるのが見えた。目立つな。ほんと。
彼はどう思っているか分からないが私的には気まずいので挨拶とかもいいかな…...下向いて早歩きで通ろう!
「優愛ちょっといいか」
「え??兵頭さんに用事じゃないの?」
「なんでわざわざ外でアイツに会わなきゃ行けねぇんだよ。」
そう言って嫌そうな顔をしてもカッコイイのだから顔が整っているとは恐ろしいことだ。
「おまえに用があって来たんだけど?」
万里は私に声をかけて先を歩いていく。でもこの間自分が逃げるように別れてしまったせいで少し気まずい。立ち止まっていると、
「ちゃんと全部話すから」
私が立ち止まっているのを見て彼が言った。なんともないただの言葉のはずなのにすごく嬉しくて仕方がなかった。
「うん、」
頷いて彼について行けばこの間のカフェよりも小さく落ちついた雰囲気のカフェに着いた。
コーヒーとチーズスフレケーキを注文した。彼は飲み物だけだった。
特に何を話すわけでもなかったけど、カフェの落ちついた雰囲気のお陰なのか、それとも幼なじみのお陰なのか分からないが安心した。
この間はちょっと怒ってしまったけどやっぱり万里といるのは落ち着くと思えた。
「お前さ、心配してくれてたんだって?」
「え?」
「俺が劇団やってること」
「え!?あ、天馬なんか言ってた」
私なんかの、ただの知り合い程度の関係で心配だなんておこがましいよね。しつこいんだよって怒られるのかな、今度こそみはなされるのかなとどんどん嫌な方向に考えて下を向いてしまう。
「心配してたとしか聞いてねえけど、まあ驚いた」
「?」
驚いたと言った彼の声は案外明るい響きのものでそれに私が驚いて顔を上げた。
「まあ俺から距離を置いて5年も空いてたけどやっぱお前には色々バレてんだなって思って」
「え?」
「兵頭にあって、劇団に入って初めて挫折した。今まで何でもこなせてたからこういうの初めてでよく分かんねえけどアイツらに負けたくねえから俺ももっと本気で芝居に向き合おうと思う。」
「そうなんだ」
「驚かねぇんだな」
「うん。驚きよりなんか安心した。」
「安心?」
「だって万里楽しそうだもん。よかったね」
「ありがとな。」
そう言って笑っていた万里の顔は最近のやる気の無さそうな顔ではなくて、万里が退屈を感じる前の、昔の、よく知ってるあの時のようなイキイキしているような顔をしていた。
「演劇見に来いよ」
そう言われチケットを渡された。
·