シリーズ 短編

□涙色ドロップ
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至 彼女 寮ぐらし

今日は残業で帰るのが遅くなった。お腹減ったわ〜。最近カレー続きだからそろそろ監督以外が料理当番だと信じて寮に帰宅すると、夕飯が何かということよりも気になる光景が広がった。

「あ、いたるんお仕事お疲れ様〜」
「至さん遅かったっすね」
「あー残業してきたからね」

談話室には天馬と一成と万里と椋と栞結がいた。周りには言っていないが栞結とは付き合っている。
その栞結が今テレビを見ながら泣いているのだ。

「あ、至さんおかえりなさい」

みんなが挨拶してようやく気づいたようで俺の方を見る栞結の目はまだ潤んでいて少し赤くなっていた。

「泣いてたの?」
「え、うん・・・・・・」

そう言うとただでさえ泣いて目が赤いのに恥ずかしさで頬まで赤くなっていく栞結。慌てて手で顔を隠しているがそういう仕草が可愛くて仕方がない。

だけど

「栞結ちゃんドラマ開始5分で号泣してんの。ウケたわー。」
「ううっだってこんなの悲しすぎて。」

そう言いながらも泣いてる栞結にさり気なくハンカチを渡している万里。

「ありがとう」

そう言ってハンカチを受けとって涙を拭っている栞結を慰めるように頭をポンポンと万里の手が撫でているのを見て俺の思考回路は止まった。
え?なに?これこそドラマみたいなんですけど。高校生でこんなこと出来る?まじスーパーウルトライージーモードだな。
でも無理、耐えられないわ。

「栞結ちょっと来て」
「至さんご飯は」
「あとで」

気がついたら俺は栞結の腕を引っ張って自室に連れてきた。

「な、なんですか。」
「ドラマ何チャンネル?」
「え、あ、8です。」
「ん。」

チャンネルをドラマに合わせると大人しくソファに座ってドラマを見ている彼女。今回は結構悲しい回のようで切ないような、寂しいような顔をよくしていた。

「そんなに面白い?」
「面白いですよ。」
「ふーん。」
「あ、テレビ使っちゃうとゲーム出来ませんよね、談話室戻りま・・・・・・」
「ダメ。」
「なん・・・・・・」

きっとなんでと言いかけているであろう彼女に後ろから抱きついてその質問に答える。

「俺以外の男の前で泣かないで」
「え」
「栞結隙がありすぎて心配だわ」
「そんなことないですよ」
「あるでしょ。さっきだって万里に頭触られてたし。」
「別に万里くんはそんな気無かったと思いますけど」
「それでも嫌だ。」

つい抱きしめている腕に力が入ってしまう。それに気がついたらしい栞結は俺の腕に手を重ねる。

「心配かけてごめんなさい。」
「栞結涙もろいんだから。泣くんだったら俺の前にして」
「え」
「次俺以外の男の前で泣いてたらお仕置きだからね」
「・・・・・・気をつけます。」
「残念」

ちょっとおちゃらけて言って見せたけど実際は本気で言っていて。
たたでさえこんな男だらけの寮にいる訳だから不安で仕方ないというのに隙だらけな栞結を見ていたら心配してしまうのも仕方が無い話だ。

「いたるさん、」
「なに?」
「このドラマ来週最終回なんだけど見たいから至さんの部屋で見てもいいですか?」
「もちろん。ていうかそうして。」
「分かった、ありがとう。」

この年にもなって嫉妬をむきだしにするのは違うと思って精一杯得意の外面で繕って見せたけど彼女はそれに気づいたみたいで素直に謝る彼女を見て適わないなと感じた。

劇団で同じ寮にいて周りに気を使われるのも嫌だからとみんなに隠している。でも俺としては早くみんなに自慢してやりたい。それでも彼女の意見は尊重してあげたいと思うわけで。

まあ今回ので勘のいいヤツは気づいたんだろうけどな。俺としてはその方がいいんだけど。
誰にも渡さないよ。

このあとドラマを見終えて安心しきった栞結が俺の部屋で寝たのでご飯を食べに戻ればさっきのヤツらに(主に万里と一成が)すげー細かく聞いてきた。

付き合ってることは隠してるしどうしようかなとも思ったけど口が勝手に動いて「好きだよ」と言ってしまっていて椋は素敵です〜、一成はやっぱり〜と言っていて天馬は何も言わずにでも顔は真っ赤になっていた。
万里はというとマジかよ、狙ってたのにと小声で言っていた。こういうのがいるからこれからは付き合っていることは言えなくても圧力はかけてこうと心に誓った。

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