ジョースター家は今日も平和です

□色恋沙汰にご注意
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『たまにはチェスでもどうだ』










そう言ってDIOが引っ張りだして来たのは幾分か保存状態の良い古いチェス盤。何でもDIOのお気に入りらしく、この前弟と色の剥げた黒い駒を綺麗に塗料し直している所を見かけた。
そんなに思い入れがあるのだろうか。
特に今、用事の無い俺は二つ返事で了承し白い駒を並べ始めた。


「ときにシーザー」

「何でしょう」

「人と向き合う事はどういう事だろうか」

「?」

DIOの手にしたポーンが一マス動く。
少し吹き出しそうになったが本人は至って真面目そうな顔で聞いてくるのでこれは何かあったなと勘を働かせて、なるべく地雷に踏み込まない様に恐る恐る進む。

「その人を受け止める…という事ですか」

「残りの人生を投げ捨てて一生涯傍にいるなど気が狂っているのだろうか」

「恋人としての仮定ですね」

「まあ、そう何だろうな」

うーん、
DIOはチェスが強くてチェスの盤面を整えてどう攻撃するかの攻防戦を考えるだけで精一杯なのだが、多分これはお悩み相談なのでどうにか同時並行させれる様に努めてはみる。
あ、ポーン一体取られた。油断してしまった。


「こう何年もアイツよりも生きてきているのに年下相手にこうも戸惑うのは何だか腹が立つな。全く持って不愉快だ」

「年下?」

「いや、聞き違いだ」

聞き違いな訳がない。
すり減る兵を他所に少しだけDIOの様子をうかがうとほんのりと耳が桃色に色づいている。粗方、年下と言うのは図星と言うか口を滑らせたので間違いないな。
隙をみて奴のポーンを削る、がその先に睨みをきかせていたナイトにあっさり持ってかれた。

「何だろうなぁ…最近少しばかり意識が芽生えたというものこう、ヘドが出そうというか、はらわたが突き破ってくるというか……」

「心臓を内側から舐められた感じ?」

「そう、それだ。まさにそんな感じがするのだ」

「おかしいですね、それって」

「そうだ。たかが高校生のクソガキがこのDIOをこんなにも揺らめかせているのだ。気色の悪い事よ」

そろそろ、チェスも終了する。
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