読み物

□吸血鬼?いいえ、インキュパス
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何か、いるのだ。

一家の大黒柱の様な存在であるジョナサンに承太郎を呼んで来て欲しいと言われて承太郎の部屋の前にてノックしてから二分弱ぐらい。いつもは直ぐに帰ってくる返事が聞こえず、少しばかり不思議に思った仗助は勝手だと分かってはいるが部屋に踏み込んでしまった。
__別に承太郎さんにやましい事がある訳じゃねーし…しかもよく考えたらあの人エロ本とか持ってそうにねーしなぁ…。
なんて何処か的の外れた事を考えて部屋を見渡すと、ソイツが居た。

「………」

承太郎のベッドの上で、不自然に盛り上がった羽毛布団。中の生き物のようなモノの呼吸に合わせて微かにだが上下に小さく動いている様に見える。明らかにペットとかそういうサイズじゃない。
(というかあの人飼うならヒトデしかないっスよねぇ…)
足りない頭であれこれ推測してみるがどうにもしっくり来ない。女なら承太郎さんは連れ込んでいるのを見たことないし隠れて…というのもそれはそれであの人らしくない。
どれもイマイチこれと言う確証がないので納得ができないのだ。そこで、仗助は今一度自分の周りを見渡す。
承太郎の部屋で、自分と訳のわからない毛布にくるまった生き物が一匹。それに、ジョースター家の人間は承太郎の部屋には滅多に入らない。(気づいたら論文ばっかり書いてる人だから)承太郎も戻って来る気配はない。

つまり、この正体を探っても何もバレなきゃ知らんぷりで突き通す事が出来る……

(ひぇ〜…いやいや……ここは承太郎さんを疑う様な真似はしたくねェーけどよ…気になるじゃんかよォ〜)
ふらりと覚束無い足取りでベッドに恐る恐る…と言う感じで近づくと布団からはみ出た金色の何かに気づく。触れなくてもこれは中にいる者の髪の毛だろう。そうしたらやはり人間か?
ここで仗助の中の動物説が一つ消える。
耳をこっそりと近づけると小さくではあるが寝息が聞き取れる。時折、唸る様に「うりぃ……」という低い声が耳を掠めた。
(……まさかの男っスかァ〜?)
承太郎のベッドの上で、顔は分からないが我が物顔で羽毛布団にくるまって眠りこけている人物…それも男ときた。一番嫌〜な承太郎ホモ説が頭をよぎるがそれは流石に厳しすぎるとぴっちりと整った頭をぶんぶんと横に振って邪念にも似た思想を打ち消した。
ごくりと生唾を飲んで、膨らんだ布団に手をかけた。
これを上に少し上げるだけでこの中身が見れる。あわよくば同時に承太郎さんの秘密が見れるかもしれない。
好奇心が反応すれのは明らかに後者の方だが、承太郎が鍵をかけ忘れるのが悪いのだと言い訳をぶつぶつ漏らしながらゆっくりとその布団をめくりあげた。


「う、りぃいいいいいい!!!!」

「の、おばッ…!!」

めくりあげた途端、その中にいた者が勢いよく仗助に跳びかかり、ベッドの上へと引きずりこんだと思えば、のしっと腹の上にのしかかり、上機嫌に見下ろしているのだった。
いきなりの事で頭が処理しきれず、ショートしてしまった仗助は悲鳴すらも声に出来ず魚の様にぱくぱくと口を開閉させては目をひきつらせる事しかできなかった。
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