読み物

□嗚呼、運命の王子様。
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私を殺す最期の時、ぎらぎらと鈍く光る怒りを宿した目が大好きで、ジョジョの時とは違う、アイツが包み込む優しさなら、コイツは食い殺される様な熱い噛みつきで、何回も巡って繰り返す間に、

いつの間にか、憎しみが愛に変わってしまったのである。












「う〜…はぅ〜」

かなり、なだけであって完全には馴染みきっていない星の痣。承太郎達がカイロに来てからじくじくと甘い痺れが強くなったような気がする。ジョースターはこののっとってしまった我が身に引かれている。私と承太郎は、きっと出会う運命にある。
一巡前の、奴の表情が記憶にざっくりと爪痕を残していて、やはりアイツは人間だ。プッツンしただの怒らせただの散々言っておきながら、その顔には少しだけ同情の様な、哀れんでいる様な感情が混じっていたのだ。
憂いと悲しみの青が染みたあの顔が、声が、とっても素敵で、こうして承太郎に惚れてしまったのだ。
百年と生きた吸血鬼が、たかが数十年の高校生に。

(それにしても承太郎と時の中で過ごす時間はどれだけ幸福だった事か…最初はちょっぴり悔しくもあったがまったく同じタイプのスタンドだなんて予想だにもしていなかった。やはり私と承太郎は何処か惹かれ合っている。ジョースターなんてそれだけじゃぁない…こんなにも胸が苦しいだなんて、なのにその苦しみが幸せだって感じているなどと……)

「ああジョースターの気配を感じるぞ!ジョセフと承太郎だ!ふふ、もう少しだ、もう少しで私はこの世界の承太郎にやっとこさと会える訳だふはははははぁああ!!ぁ〜、あ〜あ……♪」

早く来てくれ承太郎。この痺れだけでは足りない。貴様のその低い声を聞いた時なんてこんな刺激じゃあないんだぞ。内側からチョコレートのように溶かされる熱が、脳が蕩けてしまうあの熱を孕んだ声が愛しい。早く会いたい。館に近づいている!あの愛しい、思ってやまない存在が!!

「ふふふ、ふふ…承太郎〜……♪」

「失礼致します!!DIO様!!」

バタンと乱暴に開けられたドアが軋んで悲鳴を上げている。ベッドから這いつくばった様な格好で上半身だけを起こすと何やら張り詰めた顔のヴァニラがいた。何だ、と一言だけ返すとやけに殺気を纏った目でこちらを見つめる。

「…館に侵入者が来ました。恐らく、ジョースター達でしょう」

「ふふ、そうか。もうそんな所までか。テレンスはもう手を打っているだろうな?」

「勿論でございます。残りは…私が始末致します」

「ああ、どうでもいいが殺すなよ。そいつら」

「…は?」

私の言葉を聞いてヴァニラが豆鉄砲を食らった鳩の様な、はたまたイタズラを仕掛けられた様なぽかんとした顔で見上げる。当然だろう。仲間でも殺して怒りを売った(からかったりもしたがな)のならその時はきっと承太郎に嫌われてしまう。
だけどここでどうにかしなくてはどこかで話が狂ってしまう。いるはずのない人がそこにいるとどんな事をしでかすのかも分からんしな。
台本を持たない配役はあまり舞台に上がらせてはならない。殺さずに舞台を下ろさせるにはどうすればいいか。
一時的な神隠しに合ってもらおう。私と承太郎が無事に巡り会う事ができたらタネ明かしして奴等を解放する。
何ともまあ私らしくもない計画を立てたものだ。本当に。

「生け捕りにしろ。何か怪我でもさせたらヴァニラ・アイス……分かっているよな」

「はっ…DIO様のご命令ならば、必ず…」

ふふ、楽しみだ。
早く物語のページを捲ってくれ。早く、承太郎…!
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