読み物

□雪と死んだ体温の反比例
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「ただいま」


ホワイトクリスマスなんて来ず、今更になって冬が暴れまわっている様な寒さでしかも、雪が降っているときた。12月は仕事をしなかったくせに年を越して冬休みやら長期休暇が終わった所でこのザマである。天気も空気読め死ね。
肩に積もった雪を軽く払い落としてさっさと冷えた廊下を歩く。すると、雪の積もった中庭に何やら異様なぐらいかなり存在感をここぞとばかりに主張する半球体__かまくらがどどんと居座っていた。朝出る時は見かけなかったソレは中々の力作と言えるもので恐らく俺が入れるくらいにバカでかい。普段から体格は人並み以上だと自覚している俺が入れるくらいだ。勿論そんなのを作る暇人は一人しか見当しない。
「……何やっているんだお前」
「かまくら、と言うのを作ってみたのだ。雪が足りなくてな、中庭から集めるにはどうも気が引けたのでホリィに雪かきを頼まれたついでに玄関周りの雪を全部集めてきた」
「馬鹿野郎。道理で俺の家の周りだけ雪が少ねぇと思ったらそういう事か。」
「ちゃんと仕事はしたぞ」
ひょい、とかまくらの入り口を覗くとちゃっかり楽しんでいる吸血鬼がいた。かまくらの隣には三等身の雪だるまが作られていて、朝から雪が降って曇り空なのも重なってすっかりはしゃぎまくっている様である。無駄に高クオリティなのでこういう器用さをもっと他の所で発揮しろとすら思う。
勝手に人の家(監視目的もあって半同棲ではあるのだがそれはともかく)の盆を勝手に引っ張りだしてウサギを作っている始末だ。いつもの口癖に帽子をくいっと下げるとDIOが不思議そうに俺を見た。
「承太郎は雪が珍しくないのか?花京院はすごく楽しそうにしていたのに」
「珍しいも何も別に遊ぶほどじゃねぇしな。ただ雪が積もってすぐ、誰にも踏まれていない真っ白な一面は悪くねぇと思うぜ」
「私が子供の時は空から降ってきた子供の遊び道具だと思っていた。なのに私の目の前にいるクソガキはいっちょまえに大人ぶって鑑賞道具みたいな事を言う」
「そういうもんだろう」
「承太郎はちっとも分かっちゃいない」
何がだ、と言い掛けた所でコートをいきなり引っ張られたかと思うと、DIOは無慈悲にも俺の服の中に雪の塊を突っ込んだ。突然の事に驚いて間抜けな悲鳴を短く上げるとゲラゲラと上機嫌にかまくらから這い出てくる。
「てめ、急に…」
「どうだ承太郎!いや〜に大人ぶってカッコつけていても似合わんと言っているのだこのDIOは!寧ろ早く私に雪玉をぶつけてムキになっている方がお似合いだ!」
「……ックソ!後で降参するっつっても頭地面に擦り付けて謝るまで許さねぇからなDIO!!」
「はははは!掛かってこい承太郎!!」
頭にカッと血が上って一心不乱に雪玉をぶつけていく。DIOも中々の応戦っぷりで正直寒さをあまり感じないという吸血鬼の身体はチートだと思った。でか玉を頭から落とされたり顔に向かって投げ込んだりとDIOや雪と戯れる事五分弱。たまたま廊下を通り掛かったお袋に承太郎も雪ではしゃいでるのね、と機嫌良く言われた所でやっと頭が冷えた。後にDIOの口車に乗せられたような気がしてゲラゲラと指差して笑うDIOの口に雪を突っ込んでやった。
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