読み物

□星の子供と泥の神
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私には微か記憶にしかパパはいない。どんな風に名前を呼んでくれたかなんてあまり覚えていないのに。
涙が出てきちゃって吸血鬼さんにぎゅっとしがみついた。吸血鬼さんは驚いたようだったけど、背中を撫でてくれた。パパに会いたいなぁ。
「薄情なヤツだ。だがそれがアイツなりの不器用な優しさなんだろう。徐倫、きっとお前にもいつか分かる」
「アイツ?ねえ、今なんて…」
「お前のパパは一時もお前の事を忘れた事などないと思うぞ、この私は。いつか時期がくれば巡り会う。そうやって出来ているのだからな、運命とは。」
吸血鬼さんが生まれつきある星の痣の辺りを擽る。触れられた痣がじくじくと痛む。痛い。どうして
「ふふ、私にもあるんだよ。その痣が。身体は私のモノではなくジョースターから奪ったからな…痛むだろう?」
「痛い、痛い!吸血鬼さん…!!」
「私もこうしてお前と引かれて出会った。この痣にはどうも引力があると思うのだ。だからこの痣が疼く内はきっと会える。」
どうして、そんなパパを知っている様な話し方をするの?それになんで痣の事…まだまだ色んな事を聞きたいのに、吸血鬼さんは時間だと身体を窓の外へと乗り出してしまう。
貴方はいったい何者なの?どうして私の事を……
「少し話しすぎた。悪い夢だと思って流してほしい。あまり変な事を吹き込むと怒られてしまうからな」
「待って、ねぇどうして…」
「じゃあな、次の夜にまた巡り会おう」


吸血鬼さんは行ってしまった。
痛みの退いた左肩を触るとふよふよと浮いた頭の中に吸血鬼さんの言葉が何度もループする。引力が、働いている。私もいつかパパに会えるのかな。
吸血鬼さんは、パパの事を知っているのかな。ううん、きっと知っている。
だって初めて会った日からずっと、私は自分の名前を彼に教えてないもの。
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