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□雪の降る夜
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プルルルル




何度かの電話のコールで目が覚めた。




「知念、おはよ。外見てみ。」




涼介からの突然の電話に目を擦りながら出ては、カーテンを開けて外を見てみた。




「わ、雪だ。」




久々の雪に少しテンションが上がる。




「今起きたばっかなんだろ?声がカスカスじゃねーかよ。」




涼介が電話越しに笑うのが聞こえた。




うん、朝からいい気分。




「お前、今から家くる?ちょうどいらない服もお前にあげようも思ってたし。」




これはきっと口実。




確かに涼介はいつも僕に服をくれる。




でもそれが目的じゃない。




本当の目的は、




「僕に会いたいんでしょ、ばーか。素直じゃないねえ。」




そう言ってやると、顔が真っ赤になった涼介が想像つく。




「うっせーよ。とりあえず支度しとけ。」




「はいはい、わかりましたよ涼介くん。」




そういいながら僕はクローゼットに向かい、着る服を探す。




「今日は寒いからなー。なに着よう。」




僕のクローゼットにあるのはほとんど涼介がくれたやつで。




見るだけで幸せな気分になる。




「今日はめちゃくちゃさみーからちゃんとあったかい服着ろよ。」




「わかってるからちょっと黙っててー。」




「んだよお前はー。」




このだるい感じが僕は好き。




涼介が僕に心を開いてくれてる証拠だから。




「あ、これにしよ。」




僕がクローゼットから取り出したのは白のニットと黒スキニー





涼介が僕のために選んでくれた服。




「なににしたの。」




「なーいしょ。お楽しみね。」




僕は携帯をスピーカーにして机に置き、ささっと着替えた。




素早く着替えたつもりなのにやっぱり寒くて。




「ねえ、早く来て。」




涼介が急に口を開いたかと思えば予想外の一言だった。





「あら素直だこと。待ってね、もうすぐ準備できるから。」




「早く会いたいお前に。ってことでさ、迎えにきちゃった。」



てへっと語尾に星がついた気がしたけど、それはスルーして。



インターフォンから外を見ると、涼介の車が止まっていた。




「早いっつーの。とりあえず、もう行くから切るね。」




僕は一方的に切ってやった。




財布はいらないだろうけどとりあえず持って、携帯も持って、大好きな人の元へ向かう。




「知念、」




玄関を出ると、愛しい人が愛しい笑顔で、愛しい声で僕の名前を呼んだ。




外は寒くてたまらないはずなのに、なぜか寒さを感じなくて。




こいつがいる限り、僕に冬はこないなと確信した。
 

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