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□クリスマスソング
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どこからか鐘の鳴る音が聞こえた。




今日はクリスマスってこともあって、街は夜なのに賑やかで。




今日は運良く仕事もなく、涼介とクリスマスを過ごすことになった。




「好き、付き合ってほしい。」



なんてらしくない言葉か頭に浮かぶ。



言えるわけなんてないのに。




待ち合わせは、よくあるシチュエーション。




駅前の大きなクリスマスツリー。




雪が降りそうで降らない、そんな寒い夜だった。




でもその寒さが、今の僕には心地よくて。




あーあ、なんで僕、涼介に恋なんてしちゃったんだろう。




クリスマスの定番ソングとわざとらしくきらめく街のせいで、早く会いたいと思ってしまう。




まだ涼介はこない。



時計を見ると、待ち合わせ時間から十分経過している。




この十分の間に何回会いたいと思っただろうか。




こんなに会いたいのに会えない。




早く会いたい、胸が痛い、苦しい。





でもその痛みが、お前はそんだけ涼介のことが好きなんだよ、と教えられた気がした。





そんなこと自分でもわかってる。




自分がどんだけ涼介を好きかなんて、自分が一番わかってるよ。




サンタさんに、涼介と両思いにして下さい、なんて頼んでも仕方ないよね。





できれば横にいてほしいし、どこにも行ってほしくない。




僕だけをずっと見ていてほしい。




でもそんなこと涼介になんて伝えれない。



そんなかっこ悪い真似はしたくない。




そんなダラダラかっこ悪く伝えるくらいなら、涼介が好きだってかっこよく言いたいなーなんて。





僕の前を通っていく恋人たちは、トナカイのコスプレなんかしちゃってて。



よく人前でできるなーって感心。



僕も涼介とだったらできる気がする。



別に羨ましくなんてないけどね、と自分に言い聞かせるように小さく呟いた。




そういえば、プレゼント買ってないや。




涼介が喜ぶプレゼントってなんだろうか。



僕が涼介にあげられるものってなんだろうか。



いつも貰ってばっかりだから、たまにはあげたいな。




例え、涼介に大好きって言ったとして、でもその返事が思ったのと違ったとしても、涼介のこと嫌いになんかなれない。




それでも、俺も好きだよ、って返してほしくて、星に願うなんて柄じゃないけど、少しでも希望を持ちたくて、空を見上げた。




涼介にはじめて出会って、憧れだった存在が今ではこんなに近い存在になってて、自分でも知らない自分が次々出てきた。



こんなに毎日会ってても、それでも会いたいと思ってて、それを涼介に早く知ってほしくて、僕の前を通っていく人を見ては涼介の姿を探した。




時計を見たらもう二十分も過ぎていた。




連絡の一つもなく、他の誰かともしかしたら約束してるのかもしれない。




そう思うと胸が痛くてたまらない。




しかし、遠くに僕の大好きな人の姿が見えた。




あんなに痛かった胸がうそだったかのように治まった。




涼介の寒そうに走ってくるその姿を見ながら涼介に聞こえないように何度も小さく呟いた。





「涼介、好きだよ。」
 

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