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□drama
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仕事帰り、涼介はいつも一人で帰ろうとしていた。




僕は迷わず、涼介の隣へ走った。




「なんか用?急にどうした?」



「だって、」



涼介が不思議そうに笑った。



「少し話そうよ。」



「いいけど。」



突然の出来事に涼介は笑うことしかできないみたいで。




自分でもなにがしたいんだかさっぱりわからない。




「ねえ、ちょっと、」




僕は無意識のうちに、涼介の腕を引っ張った。



僕の顔と涼介の顔までの距離は五センチもないだろうか。



「な、んだよ、」



涼介が照れている。



あぁ、かわいい。



「涼介の顔を近くで見たかっただけ。ごめんね。」



僕と涼介には、よくわからない壁がある。



昔はなかった壁。




特にイザコザがあったわけでもない。




僕の勘違いだったらただの自意識過剰だけど、僕と涼介はお互い想いあっている。




いわゆる、両想いってやつ。



だからこそ、お互いどう接したらいいのかわからない。




願いが叶うのなら、絡まっていた時間を解いてほしい。



前みたいに、お互い素直に大好きと言い合えた時間に戻して欲しい。




「なに、からかってんの?」




涼介が僕に真剣な顔で聞いてきた。




いつになく真剣なので、僕も真顔になる。




「わかってるくせに。」




それからというもの、涼介との間にあの壁はなくなった気がする。




涼介の声が聞きたい、



涼介の瞳にいたい、



ずっと変わらないあの優しくて飾らない笑顔で笑っていてほしい。




ありがとう、とか僕は恥ずかしくて言えるタイプではないけれど、




直接伝えなくたって、涼介はわかってくれる。




きっとどんな言葉よりもドラマチックなサインだと思う。
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