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□嫌いなものは嫌い
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「嫌だ。絶対嫌。」
「知念、一回だけ。な?」
「無理だって言ってんの。」
「あーんしてやるから、ほら。」
今なにをしてるかって?
最悪なことをさせられてる。涼介に。
ラブラブに見えるって?
いや、全くラブラブじゃないね。
「だーかーら、ナスはいらないって。」
涼介がナス料理を作って、僕のナス嫌いを克服させようとしてくる。
涼介はナスが好きなのに、僕が大嫌いだから一緒にナス料理を食べることはない。
でも、一緒にナス料理が食べたいからって無理やり食べさせられている最中。
そりゃ、涼介が作ってくれたから食べたい気持ちもあるけど。
それでも嫌いなものは嫌いで。
断固として食べようとしない僕を見て、涼介が流石に諦めたみたいだ。
「ごめんな、無理に食べさせようとして。」
涼介が少し切なそうに笑った。
「ナスが食べれない僕は嫌い?」
涼介が慌てて否定した。
「いや、そうじゃねーよ。知念がナスを好きになってくれたら、一緒にナス食べたとき幸せな気持ちを分け合えるだろ?」
そこまで規模のでかい問題なのか、とツッコミを入れたくなったけどそこは我慢。
「だったら涼介もトマト食べれる様になりなよ。」
涼介が「うっ、」と声をもらした。
「涼介がトマト食べれる様になったら、幸せ分け合えるでしょ?」
にやりと笑って涼介を見ると、悔しそうな顔をしていた。
「でもね、嫌いなものがあっても、涼介が隣にいてくれるならなにもいらないくらい幸せだから。」
涼介の目を見て微笑んだ。
見る見るうちに耳が赤くなっていく。
あーあ、単純なんだから。
かわいいね、今日も。
僕の天敵、ナスが食べれる様になるのはまだまだ先の話だろう。